HSPさんがラクになる方法と対策グッズ

大声の人が苦手。香りに敏感。眩しがり…。HSPさんならではの気質を我慢しながら暮らしていませんか? HSP気質の良い点を活かしながら、もっと楽しく暮らすヒントについて、HSP実践・研究家の上戸えりなさんに教えていただきました。

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HSPのこと、教えていただきました

上戸えりな さん

HSP実践・研究家。1986年沖縄生まれの沖縄育ち。那覇国際高校から関西国際大学心理学部卒業。4児の母。2019年『HSPの教科書』(Clover出版)で著者デビュー。第一子妊娠中にHSPに出会う。長年触れ合ってきた心理学の知識に加え、HSP気質に関する知識と、当事者だからこその経験・対処法をSNSで発信。「HSP=生きづらさ」ではなく、気質に囚われず、その人自身が日々を充実させられるような生き方を伝えている。2021年にHSP気質をもちながら妊娠・出産・育児に向き合ってきた実体験をつづった『HSPさんがママになりまして…。』(Cover出版) を発売。 twitter:@elinaokinawa、インスタグラム:@hsp_elina、ブログ:https://ameblo.jp/kamitoerina/

うえとえりなさん

HSPのこと、相談しました

里和 さん

帽子とメガネのスタイリスト。プロ向けの講座「メガネと帽子のプロ養成カレッジ」なども開催している。HSP気質であることを、数年前に自覚。現在は、その気質と上手にお付き合いする方法を模索中。https://satowa-hat.com/

さとわさん

HSP気質とは?

HSPとは「ハイリー・センシティブ・パーソン」の略で、「繊細・感受性豊か・敏感」な気質をもっている人のことを言います。主な特徴として、

●いろんなことに気づきやすい
●団体行動が苦手
●周りから気にしすぎ、考え過ぎと言われる
●騒音が苦手

などがあります。

HSPは病気ではありません。生まれながらに持っている個性のひとつであり、5人に1人はその気質をもっていると言われています。「過剰に神経質な人」と思われることもありますが、それとも違います。

HSPさんは気質を持っていない人に比べ、とても五感が鋭く「音」「光」「香り」「肌への刺激」「他人からの目線」などに過敏に反応してしまい、それが原因で体調を崩してしまうこともあります。今回は、HSP気質をもち、その気質を活かして帽子とメガネのスタイリストとして活躍している里和さんが、日々感じているお悩みを上戸さんにご相談。悩みや辛さをやわらげる工夫やグッズについて教えていただきました。

HSPさんがラクになる方法①緊張を和らげたい時は、肌触りのいいものをさわる
HSPさんがラクになる方法②視線が気になる時はメガネでパーソナルスペースをつくる
HSPさんがラクになる方法③帽子、傘、マスク、綿の下着で五感の刺激をやわらげる
HSPさんがラクになる方法④LINEは苦手とあらかじめ伝えておく
HSPさんがラクになる方法⑤逃げたくなったら、携帯を持ってトイレへ!
HSPさんがラクになる方法⑥自分のトリセツをつくる
HSPさんがラクになる方法⑦頭をからっぽにしたい時は「推し活」がおすすめ
最後に、HSPさんが家族やパートナーにいる方へのアドバイス

HSPさんがラクになる方法①緊張を和らげたい時は、肌触りのいいものをさわる

里和 とにかく緊張しやすくて困っています。最近はリモートでの打合せが増えて、リアルでお客さまと接することは少なくなりましたが、リモートだとしても初対面のお客さまとお会いする時は、予約の1時間前からそわそわして、ひどい時にはお腹が痛くなることもあります。

上戸 緊張がどんどん増してくるのですね。電話でお店の予約をする時も緊張しませんか?

里和 はい、緊張します! 何回か一人芝居をして予行演習をしてから電話をかけています。

上戸  HSPさんのあるあるですね。想定外の質問をされたり、トラブルが起こったらどうしよう? と心配して緊張感がどんどん増してしまう…。そんな時は、五感が鋭いHSPさんの気質を活かして、ハンカチ、ブランケット、ストールなどふれると心地の良いものや安心するものを触りながら会話をしてみてください。次第に心が落ち着いてきます。

里和 私の場合もともと帽子とメガネが好きで、今の帽子とメガネ専門のスタイリストをするようになったと自分では思っていたのですが、ある方からHSPを指摘され、帽子とメガネに特化している理由がはっきりしたように感じました。帽子をかぶると安心感がありますし、メガネをかけると目の前に薄い膜ができて自分のテリトリーを守れているという感じがあります。

上戸 帽子やメガネのおかげで、いつも通りの自分に戻れているのですね。私の場合は、自分の子どもたちの写真をそばに置いて、緊張をほぐすようにしています。里和さんは帽子やメガネ以外で、リラックスできるものをそばに置いていますか?

里和 我が家には文鳥がいるのですが、文鳥さんを見ているとほっこりしてリラックスできますね。

HSPさんがラクになる方法②視線が気になる時はメガネでパーソナルスペースをつくる

――リアルで初対面の人とお話する時はリモートの時以上に緊張しますよね。HSPさんは、その気質を持っていない人よりも緊張度が強いと思いますが、リアルで対面する時に緊張をやわらげる方法はありますか?

上戸 相手を野菜や言葉の通じない外国人だと思って接してみてください。そうすると目の前に膜があるような感覚になり、気持ちがラクになります。

里和 そういった意味でも、HSPさんにメガネはおすすめです。メガネのスタイリングをしたお客さまで、セミナーに登壇する時、緊張してうまくしゃべることができないことに悩んでいた方がいたのですが、メガネをかけたら適度な緊張感のなかでスムーズにプレゼンができるようになったとおっしゃっていました。

上戸 メガネをかけることで、別の自分になりきることができるんですよね。HSPさんは、声の抑揚や目の動き、表情筋、手の動作など細かいところにまで常にアンテナを張っていて、「相手がどう思っているか」「何を感じているか」「もしかすると嫌われているかも?」ということを敏感に察知する特性があります。意識して行っているのではなく、それがナチュラルな状態なのです。伊達メガネでも良いので、ぜひ試していただきたいですね。

メガネは他人の視線を緩和してくれる。
メガネは他人の視線に敏感なHSPさんのストレスを緩和してくれる。

HSPさんがラクになる方法③帽子、傘、マスク、綿の下着で五感の刺激をやわらげる

上戸 里和さんは光や音にも敏感ですか?

里和 はい。大きな声の人は苦手ですし、眩しがりです。

上戸 それもHSPさんに多い特性です。音に敏感な人はイヤーマフやイヤフォンを使うと耳に入ってくる情報をやわらげることができますし、光に敏感な人はお出かけしたり運転する時はサングラスをかけると光の刺激を緩和できます。

里和 私は人込みのなかにいると車の音や人の声、他人の視線が気になってしまうため、外出するときはサングラスやメガネ、帽子が欠かせません。つばが下がり気味のバケットハットやニット帽のような深くかぶると耳まわりを覆うことができる帽子は守られているような安心感がありますし、キャスケットやつば広の帽子ならつばの部分を上げ下げして視界を自分でコントロールすることもできます。

ツバ広の帽子は音の聞こえ方をやわらげてくれて、キャスケットは他人の視線をコントロールできる。
ツバ広の帽子(左)やキャスケット(右)もHSPさんのストレスを和らげてくれる強い味方。

上戸 日傘をかぶると安心するという方もいらっしゃいます。パーソナルスペースが守られる感じがするんですよね。

里和 チクチクする服や服の縫い目がイヤという人もいます。

上戸 洋服のタグが気になるという人もいますね。疲れている、体調不良、悩みが多くて眠れないなどコンディションが悪いときほど気質が強く出てしまうことがありますので、綿やシルクなど肌触りの良い服や下着を着て、できるだけストレスのない生活を送ることも大切です。

HSPさんがラクになる方法④LINEは苦手とあらかじめ伝えておく

――LINEのやりとりがつらいという人もいるようですね。

上戸 相手のメッセージに絵文字が多いと「私も絵文字を多くしなければいけないのでは?」と思ったり、長文が届いたら「長文で返した方がいいかな?」、返信のメッセージを打ちながら「句点や!(ビックリマーク)が多すぎるかも」「文章が長いから改行したほうがいい?」などあれこれ気になってしまいます。気になることが多すぎてストレスになり、LINEでのやりとりに疲れてしまうという人も多いです。

私の場合、その解決方法としてLINEでのやりとりがあまり得意ではないことを普段の会話でさりげなく伝えるようにしています。LINEが苦手な人は、お相手に次のようなことを予め伝えておくと良いでしょう。

●アプリから流れてくる暗いニュースを見ると疲れてしまうため、家ではあまり携帯電話に触れないようにしている。
●LINEは使っているけれどアプリはあまり開かない。

――LINEが苦手ということを相手に伝えるだけでも、気持ちがラクになるのですね。

上戸 お相手はやさしさから「そんなこと気にしなくてもいい」「考えすぎ」と言ってくれているのに、「なぜ、こんなことまで気になるのだろう」と悩んでさらに落ち込んでしまうHSPさんもいます。LINEが苦手なのは悪いことではなく、HPSさんの特性だということを意識して、自他ともにインフォメーションしていって欲しいのです。

――メールチェックも、ストレスになるのでは?

上戸 携帯電話自体が苦手というHSPさんは多く、特に夜のメールチェックはしないようおすすめしています。「ごめんなさい。メッセージの返信をすぐ忘れてしまうんです」というように、ちょっと性格が雑なフリをしてやり過ごすのも携帯電話と上手に付き合う方法のひとつです。

HSPさんがラクになる方法⑤逃げたくなったら、携帯を持ってトイレへ!

上戸 気質をもっていない人は理解しづらいかもしれませんが、HSPさんは家族や恋人だとしても、距離を置いてひとりになる時間が必要です。

私は家でひとりになりたい時は、トイレに逃げ込みます。自分専用の部屋があったとしても、壁が薄く誰かの声が聞こえるとHSPさんはリラックスができません。自分のいる空間のなかに、誰かの存在を感じないことが重要なため、モヤモヤする気持ちが緩和されるまではトイレに籠ります。

里和 トイレに逃げ込むとき、何か持っていきますか?

上戸 携帯電話やタブレットを持ち込んでいます。私には6歳、3歳、1歳、0歳の子どもがいて、トイレにいても「ママ~」と扉をたたかれ、耳をふさぎたくなる状況になることもあります。そんな時、好きな写真や映像を見ていると、異世界に飛んで行くような気持ちになってモヤモヤな気分が晴れてくるんです。好きなマンガや、本、推しグッズなどを持ち込んでいる人もいます。落ち着ける空間になるよう、トイレのインテリアにこだわるのもいいと思います。

トイレでも解決できない時の最終手段は家出です! 時間や場所を決めるとその制限が苦しくなってしまうため、心のおもむくまま、落ち着くまで車であちこちドライブをして気を紛らわせますね。

里和 家出、私もしたことがあります! 携帯電話で連絡がとれますので、家族に「ちょっと旅に出てきます」と大体の行き先と日程だけ告げて2泊3日で旅行に出かけたり…。逃げることって、HSPさんにはすごく大事ですよね。

HSPさんがラクになる方法⑥自分のトリセツをつくる

里和 年齢を重ねるごとに、他人の負の感情をダイレクトに感じることが増えました。機嫌が悪い人や波長が合わない人といると、ひどい時は数日間お腹をくだすこともあります。負の感情をダイレクトに受けないバリアの張り方や緩和できるグッズがあれば教えていただきたいです。

上戸 HPSさんは過敏性腸症候群になる方が多いのですが、里和さんはどうですか?

里和 そういう診断を受けたことはありませんが、脱毛症や帯状疱疹になったことはあります。その時は症状が出るまで、自分がとても疲弊していることに気づきませんでした。

上戸 HSPさんは他人の痛みには敏感でも自分の痛みには鈍感です。症状が出るまでわからないというよりは、気質をもっていない人に比べて限界の設定値が高めに設定されているため、本来は「もう限界!」というレベルの痛さでも、「まだ我慢できるかも」「これくらいでつらいって言ってはいけないのでは?」と思って、からだと心のバランスが崩れてしまうのです。

――相手の負の感情をダイレクトに受けないようにするにはどうしたら良いのでしょう?

上戸 気質とは別に、育った環境や状況、性格的な部分も大きく影響するため、正解はひとつではないのですが、手段のひとつとして「自分の取扱説明書」を作ることをおすすめします。方法はとても簡単。心が苦しい時、どんな特徴が自分に出てくるかを書き出すだけで結構です。

●ストレスを感じるとどんな状態になる?
・自分を責めがち
・眠れなくなる
・上司の視線がいつも以上に気になる
・他人や家族の声やテレビの音がうるさいと感じる
・お腹が痛くなる

など、自分の特徴を携帯電話にメモしておいていつでも見られるよう持ち歩いてください。つらさの容量が満タンになって体調が悪くなってしまう前に、対応できる可能性が高まります。

ストレスを感じた時に、どんな状況で、どんな症状が出て、どうすれば改善したかをメモしておきましょう。
ストレスを感じた時に、どんな状況で、どんな症状が出て、どうすれば改善したかをメモしておきましょう。

里和 自分のトリセツが処方箋であり、お守りになるのですね。

上戸 皆さんわかりやすい解決策を求めがちなのですが、一人ひとり、からだや心に出る特徴は違います。ご自身にしかしわからない特徴や落ち込み方にもっと意識をあてていただくと、HSPとの付き合い方がもっとラクになるのではと思います。

HSPさんがラクになる方法⑦頭をからっぽにしたい時は「推し活」がおすすめ

里和 あれこれ考えてしまいリラックスができないことが多いのですが、頭を空っぽにする方法はありますか?

上戸 HSPさんは、物事を深く掘り下げて考える特徴があり、考えることに終わりがありません。一方で「一つのことを極める」という特徴もありますので、考えることをやめるには「頭の中を好きなもので埋める」これにつきます!

好きなこと、好きなものに触れていると人は余計なことを考えなくなります。頭を空っぽにしたい時は、自分の好きをギュっと寄せ集めたことを、日々の生活に取り入れてみてください。

最後に、HSPさんが家族やパートナーにいる方へのアドバイス

――家族や恋人がHPS気質でない人がHSPさんと接する時、気にかけてあげた方がよいことはありますか?

上戸 HSPさんは「どうしてそんなに気にするの?」「神経質だね」と言われると傷つき、自信をなくすこともあります。そのため、その人が思っていたり考えたりすることに対して「気のせいなのでは?」「そんなことはないよ」という言葉を言わないであげて欲しいのです。HSPさんの価値観に対して、まずは「そうなんだね」と声をかけてあげてください。それだけで、HSPさんは安心しますし、良い関係性が保てるようになると思います。


※この記事の情報は2023年1月31日時点のものです。

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