「なんかしんどい」をじんわり楽に。人気鍼灸師に聞く、蒸しタオルを使った体のゆるめ方

なんとなく体がだるくて気分も重い…。そんな「なんかしんどい」を和らげる方法を、体や心のゆるめ方などをSNSで発信している鍼灸師のすきさんに教えていただきました。蒸しタオルだけでできる簡単な養生法で、日々頑張っている自分をゆる~くいたわってみませんか?

メインビジュアル:「なんかしんどい」をじんわり楽に。人気鍼灸師に聞く、蒸しタオルを使った体のゆるめ方

この方にお聞きしました

すきさん

鋤柄 誉啓(すきから たかあき)さん。鍼灸師・お灸堂院長。独自の心地良いお灸の施術が評判を呼び、地元はもとより全国から来院者がやってくるように。現在は、自院で施術や健康相談にのるかたわら、「シンプル」「わかりやすい」「ユーモア」をモットーに、楽しく続けられるお灸や養生についてのコツを、毎日X(旧Twitter)で発信中。

すきさんイラスト

なんかしんどい。その原因と対策方法は?

どうにも調子が上がらない、「なんかしんどい」と感じる日は誰にでも訪れるもの。ですが病院に行くほどではなく、明確な症状がないからと言ってその不調を我慢していませんか?

今回はそんな体のモヤモヤをちょっと楽にする方法を、鍼灸師のすきさんに教えていただきます。

なんかしんどいのイメージ


─そもそも「なんかしんどい」と感じるのは、どんな原因が考えられますか?

すきさん 天気が悪い日が続いている、座りっぱなしの時間が長い、仕事のプレッシャーなど、私たちの何気ない日常には“しんどさの種”が潜んでいます。こういったしんどさの原因を、東洋医学では「内因」「外因」「不内外因」の3つに分類していきます。

「内因」はストレスによる感情の偏りです。ずっとストレスを抱えた状態でいると、次第に心が弱っていきます。心のしんどさは「なんかしんどい」の種ですから、それを放っておくと肩がこったり、胸がつらくなったり、自然に涙が出たりするようになります。

「外因」は天候や気温などの自然環境です。心が整っていれば、暑さや寒さとも楽しくお付き合いができるのですが、ストレスで体や心が弱っていると、自然環境と上手にお付き合いすることが難しくなってしまいます。

「不内外因」は生活習慣です。朝起きて、昼間は疲れるまで動き、夕方になったら片付けをして、夜はぐっすり寝て、また朝起きたら疲れがとれている。これが1日のきれいなサイクルです。ですが長時間のデスクワークなど昼間に疲れるような動きをしないまま過ごすと、頭に血が上ります。体が疲れていない状態で目も頭も元気に動いてしまっていたるために、夜はぐっすり眠るのが難しくなります。質の良い睡眠をとらずに朝を迎えてもすっきり起きられないので、翌日にしんどさが残っているという状態になるわけです。

─「なんかしんどい」と感じるとき、体にはどんなことが起こっているのでしょうか?

すきさん 体が元気なときは、つらいことや環境の変化があってもしなやかに受け流すことができます。逆に、「なんかしんどい」というときは、歯を食いしばりながら色んなことをがんばって緊張状態が続いているために、体が固くなっています。固くなった体をそのまま放置しておくと、血の巡りが悪くなり、体が冷えてあちらこちらが弱っていきます。

そんなとき、固くなった部分をゆるめる簡単な方法は、温めること。温めることで、体だけでなく心もゆるんでいきます

手軽に体を温めるなら”蒸しタオル”がおすすめ! メリットと注意点は?

蒸しタオルのイメージ


─固くなって弱った場所を温めるおすすめの方法はありますか?

すきさん 
蒸しタオルを使った養生をおすすめしています。蒸しタオルを使うことで、体が弱っているところ、効かせたい部位をしっかり温めることができます。

─体を温める方法はいろいろあると思いますが、蒸しタオルを使うメリットを教えてください。

すきさん 
一番のメリットは、身近にあるもので簡単にお手当ができることです。新しいことを始めるようとすると、人はそれだけでストレスになります。簡単なことを少しずつ続けていく方が体にとっては喜ばしいですし、あれこれ考えずにできる方法でないと長続きしません。

もうひとつのメリットとして、蒸しタオルから発する湿気を帯びた熱は、体の奥の方まで浸透しやすく、温まりやすいという性質があります。しかも、適当なタイミングで冷めてくれますので、必要以上に肌に刺激を与えないという点も良いのです。

─蒸しタオルを使うときの注意点はありますか?

すきさん 
まず、熱さを我慢しないでください。熱さを我慢すると軽度のやけどをしたり、かゆみが出ることがあります。温度が低すぎても長時間温め続けると低温やけどをする可能性がありますので、何度か試してみて、ご自身にとって快適な温度や時間を見つけましょう。気持ちが良くなったらやめる。汗をかいたらやめる。我慢するのをやめる。この3点を守って、体をゆるめてくださいね。

温かさが持続する「スーパー蒸しタオル」の作り方

─蒸しタオルは手軽な反面、すぐに冷えてしまうイメージがあるのですが…。

すきさん 
蒸しタオルは1枚だと、すぐに冷めてしまいます。そこで、タオルを2枚工夫して使用することで冷めにくくする「スーパー蒸しタオル」の作り方をご紹介します。

▼スーパー蒸しタオルの作り方はこちら

スーパー蒸しタオルの作り方
すきさんのX投稿より引用(画像をクリックすると投稿にジャンプします)


─「スーパー蒸しタオル」を作るときのコツや、気を付けることはありますか?

すきさん 
ご用意いただくタオルは、水気をしっかり絞ってから温めないとやけどの原因になってしまいます。そうならないためにも、畳んだときに手に納まるサイズ感の絞りやすい浴用タオルがおすすめです。また化学繊維のタオルは電子レンジにかけられないので、綿100%のものを使いましょう。

蒸しタオルで体をゆるめる方法は?

スーパー蒸しタオルを作ったら、さっそく体を温めてみましょう。「ちょっとしんどい」と感じる不調別に、温めると良い場所を教えていただきした。

蒸しタオルで体をゆるめる方法①│体がだるくて、なんかしんどいときに
蒸しタオルで体をゆるめる方法②|目が疲れて、なんかしんどいときに
蒸しタオルで体をゆるめる方法③│花粉症や風邪で鼻づまり、鼻水がしんどいときに
蒸しタオルで体をゆるめる方法④│生理中で、なんかしんどいときに

蒸しタオルで体をゆるめる方法①│体がだるくて、なんかしんどいときに

すきさん 体がだるくてしんどいときは、おへそから下の力が入りにくくなっています。言ってみれば、腰抜けの状態ですね。足腰に力が入らないので、だら~っと足が開いてガニ股になったり、猫背になったり、呼吸が浅くなったりします。そんなときは、おへその下にある「関元」というツボを10分くらい温めてあげましょう。

関元を温める


すきさん 「関元」を温めてゆるめることで下半身のふんばりが効くようになって、立ち上がりやすくなったり、歩くときに足が前に出やすくなります。また腰も立ちやすくなって姿勢が良くなりますので、呼吸も楽になります。これは、私が一番おすすめしているお手当てです。これを寝る前にやって、体を柔らかくしてからお休みになると、翌朝の体がグッと楽になると思います。

蒸しタオルで体をゆるめる方法②|目が疲れて、なんかしんどいときに

すきさん 目が疲れたときは、後頭部を温めてください。後頭部には眼球と連動している筋肉があり、目の奥が痛くなったり、目が開けられなくなったりすると、後頭部のあたりが膨らんできます。首の周りの筋肉は薄くてデリケートな部分ですから、もんだりほぐしたりするとかえってつらくなる場合があります。うつぶせになって蒸しタオルで5分程度温めると、固まっていた筋肉がやわらかくなって目が楽になりますし、温かさで気持ちも良くなります。

首筋の両サイドからから真上に上がった生え際の辺りのくぼみを温める


すきさん あまりにもしんどすぎて、蒸しタオルを作るのが面倒なときは、お風呂で簡易的に蒸しタオルを作って、湯船に入りながら後頭部を温めていただくのでも良いですね。この方法でも、かなりほぐれます。

湯船に入りながら後頭部を温める

蒸しタオルで体をゆるめる方法③│花粉症や風邪で鼻づまり、鼻水がしんどいときに

すきさん 花粉症や風邪などで鼻づまりや鼻水がしんどいときは、正中線(体の中心)上で髪の毛の生え際のあたりにある「神庭」というツボを3分程度温めます。

神庭を温める


すきさん 「神庭」は、鼻詰まりや鼻水など、鼻から不快な症状が出ているときに刺激すると良いといわれているツボです。鼻の不快な症状が出ているときには、「神庭」をさわるとくぼんでいたり、ふくらんでいたりします。

神庭の場所


すきさん ふくらみやくぼみは、指で左右になでるとわかりやすいです。鼻の通りが悪いときに、その部分を指で軽く押し込むと、ズーンと響く感覚があります。外出先や職場など、蒸しタオルを使うのが難しい場合は、その部分にこぶしをぐっと押し込んでいただくと効果を感じられると思います。

蒸しタオルで体をゆるめる方法④│生理中で、なんかしんどいときに

すさきん 生理が始まると、体から熱を排出して体が冷えやすくなります。お腹が痛い、腰が痛いなどの生理中のしんどさの原因のひとつが、骨盤や子宮の冷えです。生理に伴う痛みが出たときは、生理が順調に起こるような骨盤の状態にするために、下腹部を蒸しタオルで温め、骨盤内の血流を良くしていきましょう。ゆるめ方は、体がだるいときのお手当と同じで、「関元」のツボを蒸しタオルで10分程度温めます。

関元を温める


すきさん もうひとつの方法として、内くるぶしから指4本分のところにある「三陰交」というツボを温めるのもおすすめ。「三陰交」も、生理に伴う痛みをゆるめてくれる場所です。

三陰交を温める

蒸しタオル養生で体も心もぽかぽかに

「しんどいの種」を放っておくと、体だけでなく、次第に心も元気がなくなっていってしまうかもしれません。蒸しタオルを使った簡単な養生方法でほどよく温めて、体と心のリラックス時間を作ってみてはいかがでしょうか。

※記事の情報は2024年4月19日時点のものです。

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