リカバリーウェアの効果とは? 疲労回復、睡眠の質向上など、睡眠の専門家が解説します!
着て過ごすだけで、疲労回復や睡眠の質を高める効果が期待できると言われている「リカバリーウェア」。この記事では、その効果や選び方のポイント、実際に着るタイミングなど、睡眠改善インストラクターの小林麻利子さんに教えていただきました。
教えていただきました
小林麻利子さん
眠りとお風呂の専門家。SleepLIVE株式会社 代表取締役社長、JCSP日本睡眠改善カウンセリング主宰、公認心理師。第32回日本睡眠環境学会奨励賞受賞。最新の研究を基に、4,000名以上の悩みを解決。自律神経乱れの改善に精通。テレビやラジオ等、多くのメディアで活躍中。近著に『小林式マインドフルネス入浴法』がある。
リカバリーウェアとはどんなもの?
―リカバリーウェアとはどんな製品なのでしょうか?
小林 リカバリーウェアとは原則、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(以下、PMDA)によって「遠赤外線の血行促進作用により、疲労や筋肉のコリなどの症状の改善を目的とした衣類形状の器具」と定義づけられた一般医療機器のことを指します。一般医療機器と明示するには、PMDAによる品質・有効性・安全性などの審査を通過し製造販売の認可を取る必要があるため、疲労回復などの効果に一定の信頼性があると言えます。
―「一般医療機器」と明示されていない製品の場合、疲労回復効果を期待できないのでしょうか?
小林 PMDAへの医療機器登録申請には莫大な費用がかかるため、メーカーがあえて登録をしていないケースがあり、未登録でも血流を良くして疲労回復効果や睡眠の質の向上が望めるリカバリー製品はありますよ。良質な製品であれば、必ず、第三者機関で疲労回復や睡眠の質の向上などのエビデンスをとっています。これらのデータは、メーカーの公式サイトで確認できます。
※ この記事では、「一般医療機器」の登録の有無に関わらず、リカバリー機能が期待できる製品を「リカバリーウェア」と呼びます。
リカバリーウェアの効果とは?
―リカバリーウェアを身に着けることで、どんな効果が期待できますか?
小林 リカバリーウェアの生地には、鉱石や炭などを練りこんだ特殊繊維が使われています。その特殊繊維が私たちのからだから発する遠赤外線の熱エネルギーを吸収し、輻射(ふくしゃ)*1することで血行を促進し、冷えの改善、疲労回復、むくみの軽減、睡眠の質の向上、ストレスの軽減などの効果が期待できます。
―洗濯を重ねると、効果は落ちてしまうのでしょうか?
小林 メーカー推奨の洗濯方法で洗濯をすることで、洗濯を重ねても、その効果は落ちないとされています。*2
*1熱の移動方法の一種で、温度の高い方から低い方へ移動する現象のこと。
*2製品によっては効果を保証していない可能性もあるので、公式サイトで確認されることをおすすめします。
リカバリーウェアにはどんなアイテムがある?
―リカバリーウェアには着圧式と非着圧式があるようですが、着用目的に違いはありますか?
小林 着圧式は、基本的に筋肉の損傷リスクが高いアスリート向きです。着圧式タイプで「足のむくみの軽減ができる」と謳っている女性向けの製品がありますが、妊婦さんや産後のかなりむくんだ脚のケアでない限り、日常で着圧式タイプのリカバリーウェアを着るのはあまり現実的ではないと思います。
日常で使うなら、非着圧式がおすすめです。パジャマ、部屋着(上下のスウェットやTシャツ)、アンダーウェア、靴下、アームウォーマー、レッグウォーマー、首ウォーマーなど種類も豊富。睡眠の質を高めたいならパジャマ、仕事中の疲労回復や肩こりの軽減にはアンダーウェア、日中のストレスケアには手首にリストバンドや靴下など、目的に合わせて選ぶことができますよ。
リカバリーウェアの選び方のポイント
リカバリーウェアは主にネット通販で購入できますが、2千円台~2万円以上するものまで価格に幅があるので、良質なものを選ぶためのポイントを知っておくと安心です。
効果が期待できる製品を選ぶポイントを、小林さんに教えていただきました。
リカバリーウェアの選び方のポイント①|目的に合ったエビデンスを公表している
小林 例えば、睡眠の質を上げたいのなら、「寝つきが良くなる」「すっきりと起きられる」など、睡眠に関するエビデンスを公表している製品を選びましょう。エビデンスはメーカーにとって一番のアピールポイントですから、公式サイトで必ず公表しています。
エビデンスは、先ほどお伝えした第三者機関による科学的な根拠に基づいた調査結果であることが重要です。「××を着て就寝した当社社員の90%がよく眠れたと回答」など主観評価を公表しているケースがありますが、それは良質なエビデンスとは言えません。
からだを整えるためにリカバリーウェアを購入するのですから、ファッションやデザインなど自分の好みを重視するのではなく、睡眠、疲労回復、冷え改善、ストレスケアなどに対して、本当に効果が望める製品なのかを見極める知恵を持つことも大切です。
リカバリーウェアの選び方のポイント②|遠赤外線の放射率を明示している
小林 リカバリーウェアに使用している特殊繊維や特殊素材から発する「遠赤外線の放射率」はメーカーにとってアピールポイントになりますので、公式サイトなどで赤外線放射率を公開しているかチェックしてみてください。
PMDAが認める、リカバリーウェアに必要な遠赤外線放射率は+5%(未加工品)※ですが、医療機器登録をしていない製品だとしても、+5%以上の赤外線放射率がある製品はあります。例えば、「NELSPA(ネルスパ)」というパジャマの下に着用するアンダーウェアは医療機器登録をしていませんが、製品に使われている「スパオール」という素材の遠赤外線放射率は14%近くまであり、その試験データを公式サイトで公表しています。
着ることで血液循環がよくなっているということを数値化するのは難しいですが、遠赤外線放射率が明示されていれば、その製品の血行促進効果に対する信憑性は高まりますね。
※参考資料:独立社団法人 医薬品医療機器総合機構「医療機器の認証基準・承認基準・審査ガイドラインについて」
https://www.std.pmda.go.jp/stdDB/index_sum_absframe.html
リカバリーウェアの選び方のポイント③|日中と睡眠時で兼用したいならアンダーウェアがおすすめ
小林 日中用と睡眠用では基本的に、リカバリーウェアのデザインが変わります。睡眠用はリラックスできるようゆったりとしたデザインで作られているため、日中用の着圧感のあるものは向きません。
もし日中と睡眠時に兼用したいのであれば、アンダーウェアがおすすめです。アンダーウェアであればパジャマの下に着用できますし、外出も可能です。締め付けがなく、ある程度ゆとりをもたせたサイズ展開がありますし、パジャマよりも価格を抑えることもできますよ。
メーカーの公式サイトでは、睡眠、リラックス、外出時など、各製品についてどんなタイミングで着たらいいかが示されていますので、推奨されるタイミングで着用しましょう。
リカバリーウェアの選び方のポイント④|睡眠の質を上げたいなら綿100%を選ぶ
小林 睡眠時のリカバリーウェアは、綿100%か、ポリエステルでも汗を外に逃がす加工がしてある素材を選びましょう。
夜お風呂で温まったあと、からだは熱を放ち、深部体温を下げることで眠くなってきます。放熱すると汗が出るので、スムーズに熱を逃すためにもリカバリーウェアは蒸れにくい素材である必要があります。
もし、日中のリラックスウェアとして着る場合は、着ていて心地のよい素材であれば綿100%でなくてもよいと思います。
リカバリーウェアの選び方のポイント⑤|サイズは必ず公式サイトをチェック
小林 睡眠時やリラックス用のウェアは本来、ゆとりがあった方がよいのですが、リカバリーウェアの場合、遠赤外線の効果をより高めるためにも肌に生地が触れているものの方が理想的です。
ただしリカバリーウェアの中には、遠赤外線の放射率が高く、間に下着などの衣類を挟んでいたとしても効果が薄れない製品もあります。
いずれにしてもサイズが合っていないと効果が薄れる可能性がありますので、メーカーの公式サイトで正しいサイズの選び方や着用方法をチェックした上で購入することをおすすめします。
リカバリーウェアの選び方のポイント⑥|価格の違いは、効果の信頼性・機能性・着心地の差
小林 お手頃価格の製品は、第三者機関で調査をしていない可能性が高く、からだを整える効果の信頼性が低いかもしれません。チクチクするなど肌触りが悪かったり、脇の下に締め付けがあったりして着心地が悪いこともあります。
反対に高価な商品の場合、研究費が製品の値段に上乗せされていたり、綿素材でも肌に触れる部分がとてもやわらかく、素材自体が上質なものがあったりします。
製品の価格には、効果の信頼性と機能性の高さ、そして着心地のよさが反映されていると心得ましょう。
リカバリーウェアの効果的な着方は?
―リカバリーウェアは、毎日着た方がいいのでしょうか?
小林 私は、毎日着なくてもよいと思っています。例えば生理前やすごく疲れている日など、自分で体調のコントロールをするのが難しいときに着るのがおすすめです。
特に生理前はからだの内側の熱が外に逃げにくく、深部体温も下がりにくいため、睡眠中に足先が冷えて途中で目が覚めてしまうことがあります。
そういう場合はお風呂上りにパジャマタイプのリカバリーウェアを着て、からだから熱や汗を放出し、就寝前まではレッグウォーマーや靴下で足元を温めましょう※。
また、疲れて何もできない日には、アンダーウェアタイプを着るのもおすすめです。
※ 締め付け感が強いレッグウォーマーの場合は、寝るときには必ず脱ぎましょう。締め付け感の強いものを履いたまま寝てしまうと、寝苦しさを感じる可能性もあります。靴下は放熱を妨げる可能性があるので、就寝時には必ず脱ぎましょう。
\小林さんのリカバリーウェア活用法は?/
小林 私は疲労が強いときに、普段使っているパジャマの下に「NELSPA(ネルスパ)」という就寝用のアンダーウェアを着て寝ます。疲れのたまりやすい月末になると、仕事中に着ることもありますね。リカバリーウェアを着た翌朝はからだがとてもラクですし、着るだけでからだの機能がよくなってとても快適です。
リカバリーウェアなら効率よく、からだと心のメンテナンスができます
―最後に、働く女性がリカバリーウェアを着るメリットは何だと思われますか?
小林 着るだけでオフのモードになれることですね。働く女性は常に交感神経が刺激されていて、慢性的に疲労が蓄積している状態だと思うんです。疲労といっても、からだの疲れではなく脳の疲労ですね。 本来、しっかり眠れていれば、自然とからだと心はリカバリーできるのですが、脳が疲れていると気持ちよく眠りに入ることができません。リカバリーウェアがあれば、疲れすぎて脳が停止状態にあっても、着るだけで効率よくからだと心のメンテナンスができて、とても便利だと思いますよ。
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就寝時に着るパジャマタイプ、外出もできるスウェットタイプやTシャツタイプ、洋服の下に着るアンダーウェアなど、リカバリーウェアにはさまざまな種類があります。
小林さんに教えていただいた選び方のポイントを参考に、目的にあったリカバリーウェアを選んでみませんか?
※記事の情報は2024年3月22日時点のものです。
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