年末調整だけじゃない。確定申告で払いすぎた税金が戻ります!

払いすぎた税金を取り戻す「年末調整」。職場から書類の提出を求められて、紛失していることに気づき再発行が間に合わないことも・・・。そんな時は、確定申告で「還付申告」をすれば大丈夫 ! 今回はその対策をご案内します。

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まずは、年末調整の税金還付のしくみを知りましょう

年末調整は1月~12月の給与・賞与等の収入から所得控除を差し引いて1年間の所得税を計算し直し、給与や賞与から天引きされている所得税との過不足を調整するものです。すでに天引きされている所得税は暫定的に計算されたものですが、年末調整で所得控除を申告することで課税所得が低減されることはよくあります。結果的に納付するべき所得税が少なくなれば、すでに徴収された分との差額が還付されることになります。

ということは、年末調整ではきちんと所得控除を申告しておかないと、場合によっては税金を払いすぎたままという可能性もあります。所得控除を受けられるかどうかは個人の状況によって異なりますが、どのような場合に控除を申告できるのか知っておきましょう。

年末調整で申告できるもの

年末調整で申告できる所得控除には次のようなものがあります。それぞれどんな人に適用されるのか、概要を説明します。

・配偶者控除
年末調整をする本人の合計所得金額が1,000万円以下で、生計を一にする※配偶者の合計所得金額が38万円以下の場合に適用されます。

控除額は、年末調整をする本人の合計所得金額に応じ、13万円、26万円、38万円と段階的に変わります。対象となる配偶者が70歳以上の場合は控除額が16万円、32万円、48万円と変わります。

※日常の生活の資を共にすることをいいます。
会社員、公務員などが勤務の都合により家族と別居している又は親族が修学、療養などのために別居している場合でも、 生活費、学資金又は療養費などを常に送金しているときや、 日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には他の親族のもとで起居を共にしているときは、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。


・配偶者特別控除
年末調整をする本人の合計所得金額が1,000万円以下で、生計を一にする配偶者の合計所得金額が38万円超123万円以下の場合に適用されます。つまり、配偶者の所得が配偶者控除を受けるための条件よりオーバーしているが、年間所得額が123万円以下(給与収入の場合は201万6,000円以下)である場合に受けられる控除です。

控除額は、配偶者控除の場合と異なり、年末調整をする本人および配偶者の合計所得金額によって1万円~38万円の範囲で段階的に変わります。

・生命保険料控除
生命保険や医療保険、個人年金保険などに加入していると生命保険料控除を受けることができますが、保障の種類によって「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」の3種類に区分されます。たとえば、医療保険に加入していれば「介護医療保険料控除」、個人年金保険に加入していれば「個人年金保険料控除」が適用されます。

しかし、加入している保険によっては1つの契約で主契約や特約ごとにそれぞれ別の控除制度に振り分けられることもあります。これは生命保険料控除の内容が2012年に改正されたことによるものです。主契約や特約名称だけでは判断しにくい場合もあり、複雑に感じる人も多いと思います

控除の額は、それぞれ対象となる保険料の年間払込額によって計算されますが、各控除ともに上限額は4万円です。ただし2012年の改正により、2011年末までに加入している保険では控除上限額が5万円となっています。

加入している保険契約が複数あるなど、それぞれの控除を受けられる場合には、すべての契約を合わせた控除額の上限額は12万円です。少しややこしいですが、保険会社から送られてくる控除証明書できちんと確認するか、加入している保険会社に問い合わせするようにしてください。

なお、生命保険料控除を受けるには、生命保険料控除証明書を年末調整時に提出することが必要です。

地震保険料控除
地震保険に加入している場合には地震保険料控除を受けることができます。

控除額はその年に実際に払い込んだ保険料額になります。ただし、上限額は5万円とされています。2年以上の契約で保険料を一括で払い込んでいる場合には、一括払保険料を保険期間(年数)で割った保険料が保険期間中、毎年控除されるようになります。

なお、地震保険料控除を受けるには、地震保険料控除証明書を年末調整時に提出することが必要です。

・小規模企業共済等掛金控除
老後資産形成のためのiDeCo(個人型確定拠出年金)に加入している場合には、小規模企業共済等掛金控除を受けることができます。控除額はその年にiDeCoの掛け金として積み立てた全額です。

小規模企業共済等掛金控除を受けるには、国民年金基金連合会から送付される「小規模企業共済等掛金払込証明書」を年末調整時に提出することが必要です。

・住宅ローン控除
返済期間が10年以上であるなど条件はありますが、住宅ローンを返済中という人は住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の適用を受けることができます。住宅ローンを払い初めた最初の年は確定申告が必要ですが、2年目以降は年末調整での申告が可能です。

控除額は年末時点の住宅ローン残高の1%。ただし年間の上限額は40万円です。

年末調整で申告する際、金融機関から送付される「住宅ローン残高証明書」と、税務署から送られている「年末調整のための住宅借入金等控除証明書」が必要です。

このほか扶養控除や障害者控除、寡婦(夫)控除および勤労学生控除も年末調整で申告できる控除です。対象となる場合には忘れず申告するようにしましょう。

年末調整に間に合わない場合は確定申告で「還付申告」を !

所得控除の種類によっては会社から配られる年末調整の用紙以外に、控除証明書などの書類を提出しなければなりません。所得控除の対象となる場合、保険会社や該当機関から郵送されるはずです。しかし、郵便トラブルがあったり、紛失して再発行を依頼して届くのを待っているうちに会社の提出締切日を過ぎてしまう場合もあるでしょう。年末調整に間に合わないケースもあり得ます。

年末調整に間に合わないのは残念ですが、自分自身で確定申告をすることで税金還付を受けることができます。ちなみに、医療費控除やふるさと納税でワンストップ特例制度を利用していない場合など、税還付を受けるためには確定申告が必要な場合もあります。該当する場合には合わせて申告するようにしましょう。

確定申告は、原則、翌年の2月16日~3月15日までと期間が決まっています。2月16日あるいは3月15日が土・日曜日に重なる場合は、次の開庁日になります。

なお、副業収入など申告がなく、所得控除を申告するだけの確定申告のことを「還付申告」といい、還付申告は翌年の1月1日から5年の間のいつでも行うことができます。例えば2019年分の還付申告なら2020年1月1日から5年間になります。

確定申告時期には税務署が込み合うだけでなく、ズルズルと引き延ばして忘れてしまっても困りますから年末調整で間に合わなかった分は年明け早々に済ませてしまうのがおすすめです。申告が早ければ早いほど還付されるのも早まります。

確定申告の方法は簡単です

会社員の人で確定申告(還付申告)をしたことも、税務署に行ったこともないという人は多いと思います。基本的な手続きの流れとしては、「1.必要書類を準備する」「2.確定申告書を作成する」「3.税務署に提出する」の3ステップです。この3つのステップを順に見ていきましょう。

1.必要書類を準備する
・給与所得の源泉徴収票(年末調整が終わった後、一般的には12月分の給与明細と一緒に会社から渡されます)
・生命保険料控除証明書や小規模企業共済等掛金払込証明書などの各種証明書
・医療費控除などを合わせて申告する場合には、医療費の領収書やレシートなど

2.確定申告書を作成する
申告書用紙は税務署でもらえますが、国税庁のサイト「確定申告書作成コーナー」から作成することも可能です。源泉徴収票に記載されている給与の額や所得控除額などを見ながら、画面の案内に従って金額等を入力していきます。

3.税務署に提出する
作成した確定申告書および控除証明書などの必要書類を税務署に提出します。提出は居住地域を管轄している税務署に持参するか、郵送でも構いません。

なお、国税庁のサイト「確定申告書作成コーナー」を使って申告書を作成した場合には、その申告書を印刷することができますが、国税庁が提供している「e-Tax」からオンライン送付することも可能です。

とはいえ、年末調整で間に合わなかった分を還付申告するだけであれば、印刷して持参または郵送するほうをおすすめします。「e-Tax」はわざわざ印刷したり、送ったりという手間や、控除証明書など証明書類の提出が省略されるといったメリットがありますが、「e-Tax」を利用するには、一度は税務署に出向くなどの事前準備が必要です。会社員でも副業収入があるなど、毎年確定申告をする場合でなければ「e-Tax」を利用するメリットは特にありません。

申告書類の書き方がわからない場合は税務署の相談窓口で聞きながら記入することも可能です。これを機会に、所得税の仕組みや節税のしかたなどに関心を持ってみてはいかがでしょうか。


※記事の情報は2019年12月3日現在のものです。

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