「iDeCo」と「積み立てNISA」は利用しないと損? ! 積み立て投資のお得ポイント

私たちの前に突きつけられた「老後2,000万円問題」。このニュースをきっかけに「投資デビュー」を考え始めた人も多いのでは? そこで今回は、資産運用ビギナーにおすすめの「iDeCo」と「積み立てNISA」についてご紹介します。

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老後資金の準備は、早く始めておくほど老後は安心

「いま年金をもらっている人は良いけど、どうせ私の老後は年金もらえないでしょ!」などという声は以前から良く聞きますが、最近さまざまなメディアで取り上げられている「老後2000万円問題」を見て、本格的に老後資金準備に取りかからなくては……と考え始めた人もいるでしょう。

「老後2000万円問題」とは、金融庁が「夫婦の老後資金に2,000万円が必要」というような試算を盛り込んだ報告書を出したことが発端で、さまざまな議論が炎上した問題です。「老後資金2,000万円必要」という金額の根拠について、金融庁が発表した「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書」21ページにある「2.基本的な視点及び考え方」からの抜粋でご紹介します。

-夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職の世帯では毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ20~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で1,300万円~2,000万円になる。

「2,000万円も自分で用意しろなんて!」などという批判的な声が取り上げられてはいますが、ここで大切なことは「じゃあ、自分の場合はいくら?」「そのためにどうするか?」と考えるべきだと筆者は考えます。

具体的に老後資金としていくら準備したらいいかは、暮らしぶりや公的年金加入状況、その他の資産状況などにもよりますから、個々にシミュレーションしていくしかありません。でも多くの人に共通して言えることは、準備は早く取りかかるほど老後の安心感が高まるということです。せっかく老後資金の準備について考えたのなら今が始めるときかもしれません。

「iDeCo」や「つみたてNISA」で着々と資産形成

準備を始めようとは考えても、預貯金、個人年金保険、iDeCoなど、老後資金を準備する方法は多々あります。どうやって準備していけば良いのかわからないという人も多いかもしれません。

人それぞれに老後に必要な金額は違うとはいえ、多くの場合は1,000万円を超えるような多額な金額が必要でしょう。大きな目標に向かって資産を形成していくコツは、次の3つが挙げられます。

・毎月一定額をコツコツ積み立てる
・金利を味方に付ける
・税制優遇を利用する

理想的なのはこれら3つを併用すること。毎月コツコツ積み立てるのは大切なことですが、長らく低金利が続く昨今、預貯金に預けても利息がほとんど付かないことはご存じの人も多いはず。資産運用などで金利を味方に付けることができればお金の増え方は違ってきます。

なお、預金利息や投資などで得た収益には20.315%の税金がかかりますから、実質8割程度の収益分しか増えていきません。しかし、この税金がかからないとすれば、得た収益の100%まるまる積み上がっていきますから、お金の増え方はさらに早くなりますね。

この3つの要素を兼ね備えているのが、「iDeCo」と「つみたてNISA」です。1,000万円、2,000万円といった大きな目標に向かって、これらで着々と資産形成していきましょう。

「iDeCo」は60歳以降に年金または一時金として受け取る制度

iDeCo(個人型確定拠出年金)の仕組みをざっくり言うと、毎月決まった掛金を拠出し、その掛金を自ら運用し、60歳以降に年金または一時金として受け取る制度です。公的年金の不足を補う目的でできた私的年金制度であるため、掛け金や運用商品、税制など法律で決まりが定められています。

たとえば、毎月拠出できる金額は就業状態などで次のとおりです。

 
就業状態 拠出上限月額
会社員 企業年金制度なし 23,000円
企業型確定拠出年金に加入している 20,000円
企業年金に加入している 12,000円
公務員 12,000円
自営業者 68,000円
専業主婦(夫) 23,000円

自分自身に当てはまる上限額の範囲内で月々の拠出金を決め、自分がiDeCoの申込みをする金融機関が取り扱っているiDeCo用のから自由に運用商品を選び、毎月その商品にお金を積み立て、運用していきます。運用商品は定期預金や生命保険、投資信託などがあり、複数の運用商品を選んでも構いません。

拠出時と運用時、および受取時と3つのタイミングで税制優遇を受けることができるのもiDeCoの特徴です。毎月拠出する掛け金は全額が所得控除の対象となり、所得税・住民税の節税効果があります。運用中に得た収益は非課税。そして60歳以降に積み立てたお金の受取時には、受け取り方法によって、公的年金等控除または退職所得控除の対象となり、税金が安くなる仕組みです。

将来の受け取り額は自分で運用した結果で決まり、うまく運用できれば将来の老後資金が大きく増える可能性も期待できます。仮に30歳の人が60歳まで毎月2万円ずつ拠出するとした場合、60歳時には720万円を積み立てたことになります。30年後も現在の定期預金金利相場0.01%がそのまま変わらないとしたら、30年後の元利合計額は721万781円。一方、仮に30年間ずっと2%で運用できるとしたら、30年後の元利合計額は1,165万4,738円になります。

注意点としては、60歳までお金を引き出せないこと。60歳以降に必要となる資産を積み上げていくには「手を付けない」という生活は大切なことですが、結婚・教育資金など、他に必要となる貯金なども考えながら無理のない範囲で実行することが重要です。

必要な時にいつでも換金できる「つみたてNISA」に非課税メリットが !

つみたてNISAとは長期間に亘る少額積立および分散投資をサポートする税制優遇制度です。毎年40万円まで、最長20年間非課税で運用できる制度です。つまり、最大限で800万円の非課税投資枠を利用することが可能です。

投資商品は手数料が低く、長期の積み立て、分散投資に適した「公募株式投資信託」と「上場株式投資信託(ETF)」に限定されています。

そもそも投資信託とは、多くの投資家からお金を集めてひとつにまとめ、ファンドマネージャーとよばれる運用の専門家が国内外の株や債券などに投資して運用し、そこから得た利益(値上がり益や分配金)を還元するという仕組みの商品です。自分自身で企業業績や経済環境などを見ながら投資する株式などとは異なるため、投資に慣れていない人でも実行しやすい運用商品です。

つみたてNISAもiDeCo同様、一定の投資信託から得られる運用益が非課税。本来ならば20.315%かかるはずの税金分を含めて再投資に回すことで、より効率的に資産形成を図ることが期待できます。

iDeCoのように毎月の拠出額は決められていませんが、非課税限度額が毎年40万円までなので、たとえば毎月3万3,000円としたり、毎月2万円ずつ、ボーナス月には8万円と決めて積み立てしていくのもいいでしょう。

なお、iDeCoとは違い、つみたてNISAは払い出し(売却)に対する制限がありませんが、新規で積み立てできるのは2037年までと決められています。今から始めても積立てできるのは約17年半。20代、30代で60歳までまだ積立てが必要という人は、他の積立ても併用しながら準備していくことも考えたいですね。

「iDeCo」と「つみたてNISA」の運用方法と税制優遇ポイント

安定して資産を増やし、節税にもつながる「iDeCo」と「つみたてNISA」についてまとめました。

iDeCo つみたてNISA
運用目的 老後資金の形成 老後資金の形成、教育・結婚資金
積み立てが始められる期限 なし 2037年まで
運用方法 毎月、投資信託や定期預金、保険のいづれかを積み立てできる 毎月、投資信託やETFの積み立てができる
積立額 月5,000円から1,000円単位で選べる。上限額は加入者の就業状態により異なる 年間40万円まで
積み立て期間 60歳まで 最長20年間
積立金の受け取り 60歳以降 いつでも売却・換金可能
税制優遇ポイント 【毎月の掛け金】
 全額所得控除
【収益】
 非課税
【受け取り時】
 公的年金等控除または退職所得控除
【収益】非課税

「iDeCo」と「つみたてNISA」の運用にはリスクがあることも知っておきましょう

今回紹介したiDeCoとつみたてNISAはどちらも「毎月一定額をコツコツ積み立て」「金利を味方に付ける」「税制優遇を利用」という、大きな目標に向かって資産を形成していくための3つのコツを実現できる資産形成制度です。

とはいえ、運用する商品は値動きリスクを伴う商品ですから、積み立てたお金がいつも順調に殖えていくとは限りません。また、運用益は非課税でも、iDeCoは運営管理手数料などの手数料がかかりますし、そもそも投資信託を保有するときの信託報酬という、いわゆる運用管理手数料がかかります。

これらの手数料を差し引き、積立て資産が目減りするのでは意味がありません。メリットだけでなく、それぞれのデメリットや手数料体系などをきちんと知って、じっくり長い時間をかけて老後資金を準備していってください。


※記事の情報は2019年7月26日時点のものです。
 

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