副業でなく複業!「パラレルキャリア」のはじめ方

大手を中心とした「副業」解禁後、注目され始めた「パラレルキャリア」という働き方。どんな働き方で、何から始めたらよいのか? パラレルワーカーを実践されている三原菜央さんにお話を聞きました。

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この方にお聞きしました

三原菜央さん

大学卒業後、専門学校・大学の教員として8年間勤務した後、不動産の広報PRを経て、Webのプロモーション会社に転職。営業、オウンドメディアの編集長を経て、大手事業会社の社外広報に。プライベートでは、2016年9月より先生と社会をつなぐ『先生の学校』という団体を主宰し、フィンランドの教育視察ツアーも不定期で開催している。

三原菜央さん

「パラレルキャリア」は代わりの利かない人材になるための働き方

「パラレルキャリア」は、本業を持ちながら別の仕事をしたり非営利団体に参加することで、「複業」「副業2.0」とも呼ばれています。「パラレルキャリア」が注目される背景には、大手企業を中心とした「副業解禁」があります。

「副業が解禁されたことで喜んでいる女性もいますが、その一方で不安に感じている人がいるのも事実です」と三原さんは言います。自分の仕事がAIにとって代わる、子供ができたら仕事を続けられないかも、この仕事を定年まで続けられる保障がない。不安要素は人それぞれですが、「副業の解禁」=「失職した場合の収入源を今のうちに確保しておいてね」と会社からクギを刺されたような気分になった人もいるのではないでしょうか? そんななか、新しい働き方として注目されているのが「パラレルキャリア」なのです。

まず知っておきたいのは「副業」と「パラレルキャリア(以下、複業)」では、働く目的が大きく違うということ。「副業」は「本業」を持ちながらお小遣いといった収入源を得ることを目的とした働き方です。一方、「複業」は本業を複数もつこと。AI、年齢、性別に関係なく「代わりのきかない人材になるための働き方」です。

「先生の学校」の講義風景
三原さんは先生と社会をつなぐ『先生の学校』という団体を主宰し、講義も行っています

始め方、大切にしていること、向いている人は?

「複業」に興味があっても、何から始めたらいいのか、メリット・デメリットがわからない。そこで 「副業解禁」以前の2016年から、パラレルワーカーを実践し、「自分らしく働く パラレルキャリアのつくり方」という本を出版されている三原菜央さんに、色々なギモンを聞いてみました。

―まず、何から始めたらよいですか?

始めに「やりたいこと」「できること(得意なこと)」を書き出してみてください。次に「(世の中が)必要としていること」をできるだけたくさん書き出します。「やりたいこと」「できること」が明確でも、それらが世の中の需要にマッチしていなければ報酬にはつながりません。

私は「パラレルワーカー」を始める前から、毎週日曜日の夜30分程度で「自分会議」というものを自宅で開いています。会議に用意するのはノートとペンだけ。自分に質問をなげかけ「1秒」で答えをまとめます。瞬時に答えを出すことで、思わぬ発見があるものです。過去のノートを見返すことで、新たな気づきを発見することもあります。

「自分会議」用ノート
「自分会議」で使ったノートは現在10冊目に

「やりたいこと」「できること」「世の中の困りごと」を自分ではみつけられないという人もいます。そんな時は身近な人に質問してみてください。自分では自覚していなかった「得意なこと」「世の中に必要なこと」を友だちや家族が教えてくれることがあります。私の場合、お付き合いのある社長さんたちに「どういうスキルがあってどういう条件であればパラレルワーカーを業務委託で雇いたいと思いますか?」と質問して「必要な人材」を導き出し、広報という仕事につながりました。

大切なポイントは「やりたいこと」「できること」を声に出して他人に伝え、「ご縁」を作ることです。身近な人からで良いので「私はお店を出したいんです」「料理が得意です」と宣言をします。声に出して自分の思いを伝え続けることで、「あの会社でこんな人を探していたよ」などと周囲の反応を得られることがあります。ただし、宣言する人は選んでください。新しいことを始めたいと相談すると「そんなの無理でしょ」と、まず否定から始める人もいます。誰に伝えるとやりたいことが実現できるかを見極めた上で、丁寧に思いを伝えることが大切です。

―三原さんには旦那さまがいらっしゃいますが、複業を始めるにあたって反対はありませんでしたか?

結婚をするときにお互いに「譲れるもの」「譲れないもの」について話し合っていたので、パラレルワーカーになることは反対されませんでした。夫婦で話し合う時間は、今でもできるだけつくるようにしています。我が家ではそれを「家族会議」と呼んでいますが、週末の土日のどちらかに家の近くのカフェに行って、それぞれの考えや要望を伝えます。緊急に相談したいことは、平日に話をするようにしていますので、夫婦の会話は多いと思いますね。昨年出産をし、仕事、家事、育児をしていますので夫の協力なしでは仕事をこなすことはできません。「複業」を継続するためには、家族の協力は絶対に必要です。お互いに「やりたいこと、できること、できないこと」を伝える時間は大切だと思っています。
 

―「パラレルワーカー」に向いている人、向いていない人は?

向き不向きは間違いなくあります。向いている人は色々なことに興味がある人。実は私、とても飽き性なんです。一つのことを長く続けるよりも、興味があるものができたらそれについて学びたいっていうタイプで…。そういう人には「複業」が向いていると思います。向いていないのは職人気質の人。一つのことを突きつめて考え、没頭するタイプの人は「複業」を続けるのが苦しくなると思います。「複業」という働き方のほうが「ワクワクする」のであれば、そちらに向かって進めばいいし、そうでないならば「複業」を選択する必要はないと思います。

三原さんとお子様
昨年に出産。本は妊娠中に書き上げたという

「自分のキーワード」を見つけて、自分らしく働く

最後に、「複業」に興味を持たれた方へ三原さんからアドバイスをいただきました。

「複業」を始めたいと思っている方は、「●●会社の××さん」ではなく、「▲▲といえば××さん」というように「自分のキーワード」をたくさん持つことです。私の場合は「SNSといえば広報」「広報といえば三原さん」という流れで広報の仕事依頼がきたこともありました。自身を表現するキーワードは、2〜3個ほど持つことをおすすめします。複数あることで稀少性が増し、あなたにしかできない仕事につながりやすくなります。

今の時代、収入を得る先が1本というのは怖い。「複業」というスタイルではなくても複数の収入の柱を作っておくのは大切だと思います。その手段が「複業」かもしれないし、違う働き方かもしれない。それは人それぞれだと思います。「複業」というと「起業」というイメージもありますが、もっとライトに「自分の強みを探しに行く」ための一つの手段だと思っていただければいいのではないでしょうか?

興味があることを始めてみたら、自分の強みにフィットして、結果お金が稼げるレベルなる、ということが起こるのが「複業」です。「挑戦したけど自分にその仕事は合わなかった」と気づくことができるのも「複業」の強みです。いつか起業したい、でもいきなり始めるのはリスクがある。だったら、小さな規模から「複業」でその仕事を始めてみるというのもいいでしょう。まずは、一歩を踏み出してみませんか?
 

三原さん著書
三原菜央さんと22人のパラレルワーカーの実例がまとめられた本です


「自分らしく働く パラレルキャリアのつくり方」

著者の体験と、22名のパラレルワーカーへのインタビューを通して「パラレルキャリアを築くには?」「その始め方は?」「軌道に乗せるまでの方法は?」など、ノウハウがたっぷりつまった実践本です。

著:三原菜央
出版社:秀和システム
1,400円+税

※記事の情報は2019年4月26日時点のものです。

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