缶詰ひとつでできる、疲れとり養生レシピ

漢方アドバイザーの久保奈穂実さんが、簡単で続けやすい食養生の方法としてSNSで発信している「缶詰養生ごはん」。心とからだの疲労回復に効果がある栄養たっぷりの缶詰と缶詰を使った疲れとりレシピを教えていただきました。

メインビジュアル:缶詰ひとつでできる、疲れとり養生レシピ

この方にお聞きしました

久保奈穂実 さん

漢方アドバイザー、国際中医薬膳管理師。美大在学中から芸能・音楽活動を開始。ハードな生活で身心のバランスを崩す。漢方薬に助けられた経験から興味を持ち、「イスクラ中医薬研修塾」にて中医学を学ぶ。現在は「成城漢方たまり」にて漢方相談・薬膳講師。漢方薬だけでなく、食事や生活での養生も一人一人の『今』に合わせて提案している。著書に『缶詰ひとつで養生ごはん: かんたん おいしく 体が整う』(学研プラス)がある。Twitter:@naominkubo/Instagram:naomin_yakuzen

久保奈穂実 さん


缶詰疲れとりレシピ①イライラ解消|みかん缶×ハーブティー、炭酸水
缶詰疲れとりレシピ②エネルギー不足|うずらの卵缶×オイスターソース
缶詰疲れとりレシピ③目の疲れ|ツナ缶×にんじん
缶詰疲れとりレシピ③季節の変わり目、環境の変化による疲れ|豆缶×スープ
缶詰養生ごはんの5つのメリット
缶詰養生ごはんを続けるコツ

缶詰疲れとりレシピ①イライラ解消|みかん缶×ハーブティー、炭酸水

缶詰疲れとりレシピ①イライラ解消|みかん缶×炭酸水、ハーブティー


イライラは「気の滞り」が原因。柑橘系の香りで気の巡りを良くしましょう。

久保 ストレスの原因となるものが心のなかにずっとあると、気の巡りが悪くなります。ストレスを感じていないとしても、座りっぱなしで体を動かさなかったり、パソコン作業で前屈みになって呼吸が浅くなったりするとジワジワと気が滞ってきて、お腹がはってガスがたまったり、便秘になったりします。

気の巡りが悪い時は柑橘類の良い香りを嗅ぐのが効果的。おすすめの缶詰は「みかん缶」です。ハーブティーや炭酸水など気の巡りが良くなるドリンクと一緒に飲むと、さらに効果が高まります。

ティーバックのハーブティーにみかんを入れるだけ。とても簡単!
ティーバックのハーブティーにみかんを入れるだけ。とても簡単!


久保 リラックスしたい場合は、ジャスミンやカモミールにみかんを5~6粒入れて飲みます。イライラがマックスな状態の時は、鎮静効果のあるミントティーと一緒に飲むのがおすすめです。炭酸に入れて飲む場合は、常温か軽くレンジで温めて飲んでみてください。レンジで温めるとシュワシュワ感は多少薄れますが、すっきり効果は変わりません。

イラっとすることを受け流せるよう、心身のバランスを整えておくことも大事。

久保 イラっとした時にみかん缶を食べるのも良いですが、嫌なことがあった時にズドンっと受け止めず、スルっと受け流せる状態をつくっておくことも大切です。そのためには、イライラを感じていないときでもみかんを入れたドリンクを飲んだり、お散歩やストレッチなどで深い呼吸をするようにして心のバランスを整えておくことも大切です。

缶詰疲れとりレシピ②エネルギー不足|うずらの卵缶×オイスターソース

缶詰疲れとりレシピ②エネルギー不足|うずらの卵缶×オイスターソース


元気が出ない時に2粒~3粒食べて、エネルギーチャージ!

久保 日々忙しくて体力が落ちている方におすすめしたいのは「うずらの卵の缶詰」です。中医学においてうずらの卵は、五臓(肝・心・脾・肺・腎)を補うとても強力な滋養食材とされています。

炒め物に入れていただくのもいいですが、からだを整えるために私がおすすめしているのは味玉を作っておくこと。元気がない時は食事を作るのも面倒ですよね。味玉なら、めんつゆやポン酢にうずらの卵を漬けておくだけで簡単にできます。

最近私がはまっているのは、オイスターソースの味玉です。オイスターソースの原料は牡蠣。牡蠣にはからだに栄養を運んでくれる「血」を補う力があるため、エネルギー不足の時にぜひとっておきたい食材のひとつです。うずらの味玉は、疲れたときはもちろん、疲れを溜め込まないようにするための養生ごはんとして、常備しておくと安心です。

オイスターソースに1時間程度漬けるだけで、おいしい味玉ができます。
オイスターソースに1時間程度漬けるだけで、おいしい味玉ができます。

缶詰疲れとりレシピ③目の疲れ|ツナ缶×にんじん

缶詰疲れとりレシピ③目の疲れ|ツナ缶×にんじん


血を補う力が強力な「ツナ缶」と目の健康に欠かせない「にんじん」で疲れ目を改善

久保 目には毛細血管が集まっていますので、使いすぎると血をすごく消耗すると言われています。血を補うのにおすすめなのが、魚の缶詰。そのなかでも一番良いのは「ツナ缶」です。ツナ缶の材料はマグロですよね。マグロは赤身のお魚ですから、血を補う力がしっかりあります。血を補うためには、マグロと同様に「補血」の効果がある食材とあわせるのがおすすめ。そのひとつがにんじんです。にんじんとツナとあわせて和え物にしたりスープにしたりするだけの簡単なレシピで、目の疲れを改善できます。

にんじんをピーラーでせん切りにしてツナと合え、お好みの調味料で味をつけます。簡単でおいしい。そして、お弁当のおかずにも最適。
にんじんをピーラーでせん切りにしてツナと合え、めんつゆで味付けします。簡単でおいしい。お弁当のおかずにも最適です。


魚系の缶詰は、髪や肌、生理痛にも良い効果があります。

久保 血が足りない状態を中医学では「血虚」と言いますが、血虚になると髪や肌が乾燥しやすくなります。魚系の缶詰の多くは補血効果がありますので、髪や肌の乾燥が気になる方はぜひ、魚系の缶詰を食事に取り入れてみてください。

数ある缶詰のなかで私が「推し缶」と呼んでいる缶詰があるのですが、そのなかでも一番のお気に入りが「さば缶」です。さばはドロドロで巡りの悪い血液をサラサラにして老廃物を流し、からだ全体に栄養を運んでくれる優秀食材です。生理痛に悩んでいた友人に「とりあえず、さば缶を食べてみて」とアドバイスをしたところ、生理痛が改善したと喜んでいました。生理の時に血の塊が出たり、ひどい肩こりに悩んだりしていたのですが、それも改善したそうです。

さば缶をそのまま味噌汁に入れると、巡りを良くする効果がさらにアップ!
さば缶をそのまま味噌汁に入れると、巡りを良くする効果がさらにアップ!
さば缶をそのまま味噌汁に入れると、巡りを良くする効果がさらにアップ! インスタントの味噌汁などに入れるだけでOK。

缶詰疲れとりレシピ③季節の変わり目、環境の変化による疲れ|豆缶×スープ

缶詰疲れとりレシピ③季節の変わり目、環境の変化による疲れ|豆缶×スープ


花粉や感染症予防にも効果的。環境の変化に動じない土台をつくる。

久保 気温の寒暖差や季節の変わり目や引越しや職場移動などの生活環境の変化は中医学で言う「気虚」の影響を受けやすい状態です。気虚とはからだのエネルギーとなる「気」が足りなくなること。気は外的刺激の侵入を防ぐバリア機能としての働きがあります。バリア機能が弱まっていると気温や環境の変化、そして花粉や風邪、感染症などあらゆる外的刺激の影響を受けやすくなります。

気を補うのに最適なのが「豆缶」です。豆は胃腸を元気にして、体内の余分なお水をさばく力があり、からだの土台をつくるのに必要なエネルギー源になります。土台がしっかりしてバリア機能が高まると、環境の変化にも動じない力が出てきます。胃腸が弱っている時は冷やすと逆効果になりますので、あたたかいスープに豆缶を入れて食べてください。豆はどんな種類でも大丈夫です。

コンビニで売っている野菜スープに豆をたっぷり入れました。
コンビニで売っている野菜スープに豆をたっぷり入れました。


久保 お米やきのこ類など、気を補える「補気」食材とあわせて食べると効果が高まります。コロナ禍以降、「重だるい」という症状を感じている方が多いですが、重だるいという症状は湿の停滞です。豆缶は胃腸を元気にして湿を捌く力をつけてくれますのでエネルギー不足の疲れだけでなく、むくみによる重だるさも解消してくれます。

缶詰養生ごはんの5つのメリット

久保 食養生に缶詰を取り入れるメリットは6つあります。

①缶を空けたらすぐ食べられる。
②食材がシンプルで、味付けをしやすい
③魚は骨まで食べられる
④旬の時季に収穫して加工するため栄養価が高く、比較的安価
⑤手軽にスーパーやコンビニで購入できる
⑤長期保存ができて、ローリングストックに最適

久保 常温で3年間保存ができるため、保存食としてはもちろん防災時の非常食にもなります。最近「フェーズフリー*」という考え方も出てきていますが、日ごろから缶詰をおいしく食べる、自分のからだにあわせて食べるという習慣ができていれば、災害時にも日常と同じごはんを食べることができますので、缶詰養生ごはんはフェーズフリーという観点からも良い食習慣だと思います。

*フェーズフリーとは
平常時と災害時という社会のフェーズ(時期、状態)を取り払い、普段利用している商品やサービスが災害時に適切に使えるようにする価値を表した言葉。

がんばらず、缶詰養生ごはんを食べてたっぷり寝る。それが一番の食養生です。

――缶詰養生ごはんを続けるコツはありますか?

久保 からだの不調の主な原因は、偏った食生活や生活習慣です。どんなに良い漢方を飲んでいても、食生活を改善しないと漢方の効き目が悪くなりますし、不調を繰り返してしまいます。さば缶を食べて生理痛が改善して以来、さば缶を食べるようになった私の友人のように自分のからだで体感することが大事です。

――食養生がからだに良いと思って、料理をがんばろうとする人もいます。

久保 日々のことですから、食事をつくることに大事なエネルギーを使わないで欲しい。そんな思いから「缶詰養生ごはん」をSNSで発信するようになりました。献立を考えるだけで「気」や「血」を消耗します。作る気力がないときは無理せずインスタントの味噌汁などに缶詰の食材を入れて食べ、できるだけ早く寝る! それが一番の食養生だと思います。


\かんたんでおいしい。缶詰養生ごはんのレシピが満載です/





※この記事の情報は2022年12月13日時点のものです。

  • 1現在のページ