「なんか、しんどい」女性のプチ不調をやわらげる、セルフお灸のすすめ

「ツボの位置がわからない」「火を使うのが怖い」という理由でセルフお灸をあきらめていませんか? セルフお灸は自覚のない不調も改善できる、手軽で毎日できるセルフケアです。 簡単・安全で、からだと心がラクになるセルフお灸の方法をご紹介します。

メインビジュアル:「なんか、しんどい」女性のプチ不調をやわらげる、セルフお灸のすすめ

この方にお聞きしました

藪崎 篤子さん

鍼灸サロン『Ricca』 院長。クリニックや治療院で50,000人以上を治療した経験を活かし、東洋医学、西洋医学両方の観点から不妊治療に悩む方やPMS(月経前症候群)による頭痛やめまいなど、女性独自の不調の治療を行う。患者さんの多くは不妊に悩む女性が多く、もっと早く治療にくればよかったという声がたくさん寄せられている。https://ricca-shirogane.jp/

藪崎 篤子さん

セルフお灸は治癒だけでなく、自覚していない不調も癒してくれる

--藪崎さんの鍼灸サロンは不妊症や婦人科の不調で治療にいらっしゃる患者さんが多いとうかがっています。

藪崎 主に30代から40代の妊活の患者様が多いですが、なかには20代でご結婚されたばかりでも、もともと生理不順など婦人科の不調があると、早めに体質改善しいたと思って来院される方もいらっしゃいます。

本来は若いうちから、結婚して子供が欲しくなった時に妊娠できるからだ作りができているのが理想です。女性の場合、毎月の生理が始まる思春期から、成熟期、更年期、高齢期とステージが変わりますが、年齢を重ねていくなかで何の不調もなく穏やかに過ごしたくても、現実には日々の忙しさに追われていらっしゃる方が多く簡単ではありません。日々の積み重ねでからだは変化していきますので、自分のからだを顧みる時間を持つことがとても大切だと思います。

--お灸でからだの変化を感じることができるのですか?

藪崎 毎日、同じツボにお灸をしても「今日は疲れていたな」とか「からだが冷えていたな」というように、その日の体調によって温度の伝わり方が変わります。お灸をすることで自覚していなかった不調に気づくこともあるので、患者様にもセルフお灸でからだを整えることをおすすめしています。
 

藪崎さんの鍼灸サロンで行っている「お灸教室」の様子。

 

痛み止めは、血流に影響を及ぼすものがあります。症状が出る前にセルフお灸で養生を

--症状が出る前の予防にも有効なんですね。

藪崎  そうですね。やり方はとても簡単ですから、症状が何も出てないときにまずはやってみていただきたいです。症状がひどくなってから、痛み止めを飲むのが当たり前になっている人がすごく多いのですが、痛み止めは症状を一時的に抑えるだけで、症状は再発しますし、胃腸の負担にもなります。痛み止めは胃腸粘膜に負担がかかり、血流に影響を及ぼすものもあります。長い目でみたらからだに負担をかけないお灸などで日々セルフケアをしていただく方が健康に過ごせると思います。

はじめてのセルフお灸 Q&A

セルフお灸を経験したことのない人にとって、ちょっとした不安やハードルがあることも事実。そこでセルフお灸に関する色々なギモンについて、藪崎さんにお答えいただきました。

Q1.お灸はどこで買えるの?
ドラッグストアの湿布コーナーやネット通販で買えます。

Q2.火を使うのが怖いのですが…。
火を使わないタイプのお灸もあります。例えば「太陽」(せんねん灸)なら、肌に直接貼って3時間効果が持続するため、お灸をする時間がとりにくい人にもおすすめです。ただし、お腹など肌のやわらかい場所に数時間貼り付けたままだとかぶれる方もいらっしゃいますので注意してください。また、お灸をした場所が汗ばむ場合は低温やけどの危険がありますので、ずっと放置しないほうが良いです。

せんねん灸「太陽」
火を使わないタイプのお灸。


Q3.もぐさの香りが部屋に残るのが嫌なのですが。
香りやけむりの出ないタイプのお灸もあります。


「煙の出ないお灸 せんねん灸の奇跡 ソフト 12点入」(462円/税込み)

Q4.やけどが心配です。熱くないですか?
熱源が直接肌にふれない台座タイプのお灸なら、やけどなどのトラブルが起こりにくいです。

台座タイプのお灸
台座タイプのお灸


「ちょっと熱いな」と感じたら血行改善のサインです。お灸を据えても、何も感じないという状況が続くのであれば高温タイプのお灸に変えた方が良いですし、日によって温度の感じ方が違うのであれば回数を増やして調整をしてください。お灸を据えた場所が次第に熱くなってきて、肌がピリピリしてきたら終了の合図です。熱い場合は、無理に我慢しないでください。

お灸を据えた場所はピンク色になりますが、それは停滞していた血液が温かい刺激で集まり、血流が良くなったという証拠です。

お灸をはがすと肌がピンク色に。
お灸をはがすと肌がピンク色に。


Q5.同じツボに何回までお灸を据えて良いのですか?
1日のうちで、同じツボに連続でお灸を据えていいのは3回まで。1回目より2回目の方が感じやすくなりますので、1回目で何も感じないようであれば、回数を増やして調整します。時間が空くと効果が薄れてしまうため、連続でお灸を据えるのがポイント。

かかとなど、皮膚が熱い部位は熱が伝わりにくく、毎回低温タイプを3つ使うのはもったいないので、お腹など肌がやわらかい場所には低温、かかとや足の裏など皮膚が厚めの場所には高温を使うなど、使う部位や熱さの好みで選ぶと良いでしょう。

低温から高温まで、数段階でお好みの温度を選んで購入しましょう。
低温から高温まで、数段階でお好みの温度が選べます。


Q6.お灸が効いているかを判断する方法は?
痛みを改善したい場合は、お灸を据える前にどういう状態だと痛みが出るかを確認した方が良いですね。例えば肩だったら、上と下、右と左、どちらの方が向きやすいか、どちらが違和感があるかなどを確認したうえで合谷のツボにお灸を据えてみてください。痛みのあった場所が改善していたら、お灸が効いています。足のツボなら、お灸を据える前に目をつぶって片足立ちをして、お灸した後だとからだのバランスが整って揺れずに安定するようになります。

人差し指と親指の骨の交わるところで、一番へこんでいる箇所が合谷のツボ。
人差し指と親指の骨の交わるところで、一番へこんでいる箇所が合谷のツボ。


Q7.セルフお灸におすすめの時間はありますか?
5分程度でできますので。お灸する時間帯はいつでもよいのですが、入浴後のからだがあたたまった状態でお灸すると効果が半減したり、刺激が過剰になってしまう「灸あたり」という症状が出ることもありますので、できれば平常時にお灸を据えたほうが良いと思います。おすすめなのは、眠る前。もぐさにのリラックス効果で、眠りが深くなります。


リラックス効果のある「せんねん灸 アロマ灸 60点入」(1,239円/税込み)もあります。

Q8.症状改善のためには、何日間くらい続けたら良いのでしょうか?
痛みの症状が出ている場合は1日~2日後に改善するかもしれませんが、冷え性など体質改善となると3か月くらいは継続した方が良いと思います。毎日の習慣の積み重ねが今のからだを作っていますので、がんばり過ぎずにゆっくりと気になるところから改善していくようにしましょう。

セルフお灸に必要な道具

セルフお灸に必要な道具

●お灸
お好みのものを用意します。
●ツボの本または資料
ツボの正しい位置を確認します。
●ペン
ツボの位置にサインペンなどで印をつけます。
●ライター、マッチ、チャッカマンのいずれか。
火をつけるタイプのお灸に必要です。
●ぬれティッシュ
外すとき台座が熱くなっている場合があるので、ぬれティッシュで上から包んで灰皿に移します。
●灰皿など
終わったお灸の置き場所になります。

【火のつけ方】お灸の台座を指に貼り付け、お灸の先端に火を付けます。
【火のつけ方】お灸の台座を指に貼り付け、お灸の先端に火を付けます。

ツボの位置は人によって違う!? 気持ちよくなるツボの見つけ方

--指幅4本とかツボの位置を指幅で探しますが、指の幅は人によって違うので、位置が本当に正しいのかいつも不安です。

藪崎 ツボは内臓の状態が皮膚の表面にサインとして現れている場所です。ですから、全ての人が同じ場所ではなく、前後左右で多少位置が違うこともあります。

--では、どうやって見つけたら良いですか?

藪崎 乾燥していたり、肌のキメが粗くなっている。肌の色の変化、毛穴が粗いなど、ツボのサインは色々ありますが、一番探しやすいのはへこんでいる位置を探すこと。ツボの周辺をさわってみて、なんとなくへこんでいる場所があったらそこがご自身のツボです。

ツボの位置が合っているか不安なまま、お灸を据えていても気持ちよくないですよね。そんな時は、押してみて痛気持ちいいところを探してみてください。「マイツボ」といって、そこもその人のツボなんですよ。「マイツボ」にお灸を据えても、からだや気持ちがラクになります。

症状別 お灸を据えるツボ

薮崎 人間には360以上のツボがあると言われていますが、治療に使うツボは全てではありません。プチ不調に対するセルフお灸なら、この4つのツボがおすすめです。

プチ不調に効果のある万能なツボ「足三里(あしのさんり)」
気持ちが落ち込んでいる夜には「関元(かんげん)」
生理痛、PMS、抜け毛などホルモンバランスの乱れに効果がある女性のツボ「三陰交」
眠れない日は「失眠(しつみん)」

プチ不調に効果のある万能なツボ「足三里(あしのさんり)」

プチ不調に効果のある万能なツボ「足三里(あしのさんり)」
膝の骨の上部に親指を置いて、中指と親指でL字をつくります。中指の先端がツボの位置です。


藪崎 「なんか調子悪い」「何となく不安」という時にお灸を据えると元気になるツボです。松尾芭蕉が旅をしていたときに、足三里にお灸をして疲れを癒したという逸話があるくらい、からだ全体の血流を良くする「養生のツボ」とも言われています。特に不調を感じないときでも、この場所にお灸を据えておくと日々快適に過ごせます。デスクワークで頭がぼんやりする、目が疲れている時にも効果的です。

その他:肩こり、胃もたれ、下腹部に力が出ない、便秘、下痢

—季節の変わり目、低気圧で体調を崩す人にも―

藪崎 季節の変わり目、梅雨の時季、台風、低気圧で体調を崩したりむくんだりする人は、からだに水がたまっている場合多く、内臓が疲れやすくなりますので、日ごろから足三里にお灸を据えておくとからだがラクになります。

気持ちが落ち込んでいる日には「関元(かんげん)」

気持ちが落ち込んでいる夜には「関元(かんげん)」
からだの中心線上でおへそから指幅4本下。


藪崎 からだの中心にあるツボで、お灸を据えると元気や勇気がわいてくる場所です。

その他:疲労回復、トイレが近い、のぼせなど。

生理痛、PMS、抜け毛などホルモンバランスの乱れに効果がある女性のツボ「三陰交」

生理痛、PMS、抜け毛などホルモンバランスの乱れに効果がある女性のツボ「三陰交」
内くるぶしの頂点から指幅4本上のへこんでいるところ。


藪崎 血の循環を良くするツボで、子宮、卵巣まで血流がつながっているため「女性のツボ」とも言われる女性ホルモンのバランスを保つのにとても重要なツボです。

その他:冷え性、むくみ、月経痛、月経不順、抜け毛など。

眠れない日は「失眠(しつみん)」

眠れない日は「失眠(しつみん)」
足の裏側、かかとの中央の少しへこんだところにあるあるツボ。


藪崎 睡眠不足は心、からだ、お肌にも影響を与えます。気持ちが高ぶってなかなか寝付けない日は、このツボにお灸を据えてみてください。

その他:冷え性

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夜寝る前の5分間を、自分のからだを慈しむ時間にする。プチ不調から解放されるためにも、セルフお灸を始めてみませんか?


※記事の情報は2022年4月19日時点のものです。

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