足のむくみは水分の摂り過ぎが原因? その対処法を専門医に聞きました

足がだるい、ふくらはぎがパンパンに張る…。リモートワークで運動不足になり、むくみを感じる女性がさらに増えているとか。足のむくみの原因や慢性化を防ぐエクササイズを東京血管外科クリニックの榊原直樹先生に教えていただきました。

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足のむくみは、なぜ起きる?

榊原:足のむくみは病気などが原因の場合もありますが、多くは生活習慣によるもので血流が滞ることが影響しています。全身を巡る血液は心臓から送りだされ動脈によって全身に運ばれ、毛細血管を通して体の各器官に栄養素や酸素を行き渡らせます。そして、末梢組織からいらなくなった老廃物を静脈が回収し心臓や肺へと血液を戻しています。

しかし、毛細血管の部分で、余分な水分が血管からしみでるだけでなく、静脈へ十分に吸収されず血管の外に残ってしまう場合があります。

通常、水分は毛細血管から血管外へと染み出し、細胞と細胞の間にたまります。10%ぐらいがリンパ管へと流れ、残りは静脈が再吸収し回収します。しかし、水分が過剰になったり、何らかの理由で静脈の流れが悪くなったりすると、水分の回収・排出が追いつかずに、皮膚の下にある脂肪組織などにたまってしまうのが「むくみ」です。

特に足は血液を送り出している心臓からもっとも遠く、重力の影響も受けやすい場所です。常に強い水圧がかかっているため、下肢の静脈は血流が滞りやすく水分がたまりやすくなっています。朝起きたら足のむくみが改善されていたという経験があると思いますが、これは寝ている姿勢によって静脈と心臓の高さが同じくらいになり、静脈の流れが良くなったことによるものです。このようにむくみの改善には「静脈」の働きが大きく関係しているのです。

足のむくみ、「へこむ」「へこまない」どちらが危険?

――病気を疑うむくみとそうでないむくみの見分け方は?

榊原:足のむくみチェックで指の腹ですねを押すという方法がありますが、この時、皮膚がへこんでもすぐにもとに戻るようであれば、重大な病気が隠れている可能性は低いと思います。皮膚がへこむのは毛細血管から染み出した水分が皮下組織にたまり、それがクッションになっていて、押さえると水が移動するためです。こうしたむくみは食事や運動、マッサージなどによって改善できる可能性があります。

一方、むくみは感じるが押しても凹まない場合には、注意が必要です。水とは違うゴムのようなドロドロ成分が皮下にたまっている状態です。疲れやすい、いつも眠い、少し動いただけで息切れをするなどの症状がある場合には甲状腺機能低下が疑われます。また、身体の一部だけにできるむくみはリンパ浮腫の可能性もあります。

へこむむくみでも、その度合によって重い病気が後ろに隠れている場合もあるので、以下のようなことが思い当たる場合には病院を受診したほうがいいでしょう。

□ 朝起きたときにむくみが戻らない
□むくんでいる部分を押してもなかなか戻らない
□血管が大きく膨らんでいる
□片側だけにむくみがでる
□急に体重が増えた

1日水2ℓは多い? 足のむくみの原因は水分の摂り過ぎ

――普段の生活でむくみの原因になるのはどんなことでしょうか?

榊原:クリニックを受診される患者さんで多いのが「水分の摂り過ぎ」によるものです。ダイエットやデトックスのために1日2ℓ程度の水を飲んでいる人もいますが、一般の女性ではこれは摂りすぎになることがあります。

アスリートのように激しい運動を毎日するような方は別ですが、体重60キロ未満の女性であれば1ℓ程度で十分です。食事からも水分を摂っていますので、過剰に摂りすぎると血液が水分を蓄えてしまい、毛細血管から水がしみ出てむくみにつながります。

夏は熱中対策で水分補給が欠かせませんが、秋以降は汗の量もそれほど多くのないので大量に飲む必要はありません。

水分の摂り過ぎに注意!
水分の摂り過ぎに注意!

榊原:また、水分の摂り方も注意が必要です。朝起きて一杯の水を飲むのは胃腸の働きを活発にして代謝をよくするのでおすすめです。しかし、冷たい水を一度に大量に飲むと胃腸の血流が悪くなるのでむくみにつながることもあります。また、カフェインは利尿作用があるので、水分補給の際は常温で、カフェインや糖分の入っていないものを選ぶようにしましょう。

足の筋力低下が、むくみにつながる

――運動などは足のむくみ改善には効果的ですか?

榊原:運動不足による筋力低下はむくみを引き起こすこともあるので、適度な運動はむくみ改善には効果があります。男性より女性のほうがむくみを感じやすいといわれるのは、筋力の差も関係しています。人間の下半身には全体の7割もの血液が集まっていて、それを効率よく戻すためにふくらはぎの筋肉がポンプの役割をしています。運動不足や加齢などによりふくらはぎの筋肉が低下すると、この役割を十分に果たせなくなり、むくみやすくなってしまいます。

また、デスクワーク等で長時間同じ姿勢でいるのもむくみの原因になります。ふくらはぎの筋肉を動かす機会が減りポンプ機能が働かなくなるからです。

診察に来られる患者さんに「いつもと比べて足のむくみはどうですか?」とお聞きすると「今日はいつもよりむくみが少ない感じがする」と言われる方が多くいます。これは通院のために家から歩いてきて駅の階段を上り下りする動きによって、ポンプ機能が活発になったからです。足の筋力を低下させないように適度な運動を続けることはむくみの軽減や解消に役立ちます。

女性は足がむくみやすい?

――女性にむくみが多いのはなぜなのでしょうか?

榊原:女性は男性よりも4倍ほどむくみやすいといわれています。これには体脂肪率、筋肉量やホルモンバランスなど様々な要素があります。生理前から生理中にむくみやすいという人も多いと思いますが、これは排卵後に分泌される黄体ホルモンの影響で、このホルモンには血管拡張作用があり、全身の血管を開くことで血流が停滞して水分がたまりやすくなります。

また、女性は男性よりも皮下脂肪が多いため、血管からしみ出て水分がたまるスペースが多く、むくみやすい体質と言えます。他にも冷えやダイエットによる栄養バランスの乱れなどもむくみの要因になります。


\むくみの原因、下肢静脈瘤にも注意!/


榊原:むくみを引き起こす「下肢静脈瘤」も女性に多い疾患です。静脈の中にある静脈弁は血液が逆流しないよう防止する役割がありますが、この静脈弁の機能が弱まったり、うまく働かなくなると、下方に逆流した血液がたまってしまい血管が伸びたり、膨らんだりして数珠状に変形します。

下肢静脈瘤になると足の皮下静脈がボコボコとこぶ状に盛り上がったり、網目状に浮き出たりしてきます。長時間の立ち仕事や肥満、出産、遺伝などが原因ですが、特に遺伝の要素は強く、両親に下肢静脈瘤があると子供へは90%遺伝するとされています。

女性への遺伝は男性の2.5倍とかなり高い傾向があります。命にかかわる病気ではありませんが、脚のむくみやだるさ、かゆみや痛みなど不快な症状あり、治療を希望する人が多い疾患です。女性はむくみの要因となる要素が多いので、むくみに悩まされないためには日頃のケアが必要だと思います。

足のむくみの慢性化を防ぐ、エクササイズとマッサージ

――自分でできる足のむくみケアについて教えてください

榊原:足のむくみは一晩寝ればもとに戻ることが大半です。しかし、血流が悪い時や水分を摂りすぎると1日では戻り切らないことがあり、これが積み重なると足のむくみが慢性化してしまいます。マイナスをゼロに戻すのではなく、マイナスにならないようにする「むくまない生活習慣」が大切です。以下のようなことを心がけるとむくみにくくなりますので、ぜひやってみてください。

①水分の摂りすぎに注意する(1日1ℓ~1.5ℓが目安)
②ふくらはぎの筋肉を定期的に動かしてポンプ機能を活発にする
③心臓に血液を戻すために足を高くして過ごす
④足のマッサージをする


〈簡単ふくらはぎエクササイズ〉

1.足を肩幅程度に開き、かかとを上げてつま先立ちし、しばらくこの姿勢を保ったあと、かかとを元の位置に戻す。これを数回繰り返します。
2.イスに腰かけ、つま先をあげて足首を曲げ、次につま先を床につけてつま先立ちするようにして、足首を伸ばします。

これらのエクササイズは1時間に1回やると効果的です。

〈マッサージ〉

1.心臓に血液を戻すために、骨に沿って足首からすね、太ももをさすり上げます。
2.ひざ裏や鼠蹊部(足の付け根)の部分もやさしくさすりましょう
軽くさする程度で十分。力を入れすぎないように注意してください。


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この方にお聞きました
東京血管外科クリニック 榊原直樹先生


医学博士。専門は心臓血管外科。世界的な下肢静脈瘤治療の第一人者。的確な診断と最新治療を駆使し、足のむくみに悩む女性たちを救っている。
東京血管外科クリニック ウェブサイト


※この記事は2020年8月21日時点の情報です。

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