美容にも健康にもうれしい「リコピン」。効果を高める摂り方を管理栄養士が解説します
女性に嬉しい栄養にはさまざまなものがありますが、「リコピン」もそのひとつ。美容や健康のために、積極的に摂取したい成分です。詳しい効果や、どんな野菜・果物に多く含まれているのかなど、管理栄養士の森由香子先生に教えていただきました。
ヨーロッパでは「トマトが赤くなると医者が青くなる」、漢方においては「トマトは暑さや熱により起こる乾きをやわらげ、胃腸機能を高め食欲をアップさせる」と言われるなど、トマトは健康効果が高く評価されている野菜です。トマトには有益な成分がたくさん含まれていますが、その中でも今回は「リコピン」に注目し、その働きや効果的な摂取方法について解説いたします。
美肌の味方「リコピン」とは?
「リコピン」は野菜や果物に含まれている天然の赤い色素成分です。カロテノイド*に分類され、その仲間に「α-カロテン」「β-カロテン」などがあります。サプリメントにもなっているほど、健康な体づくりに欠かせない成分として有名です。
*黄、橙、赤色などを示す天然色素の一群
β-カロテンのように必要に応じて体の中でビタミンAに変換される働きは持ち合わせておりませんが、その働きはパワフルです。活性酸素の発生防止と除去する力がβカロテンの2倍もあるとされています。そのため「リコピン」は、シミやくすみ、しわなどを改善する美肌効果や動脈硬化予防が大いに期待できる成分です。
リコピンの健康への影響は?
リコピンをはじめとする「カロテノイド」は食事から摂取したのち腸管から吸収され、肝臓を経由し血液にのって末梢組織へ運ばれ、汗腺を通じて皮膚へと広がり蓄積されると考えられています。カロテノイドが含有されているミカンを食べ過ぎると手の平や足の裏が黄色くなる柑皮(かんぴ)症になる場合もあることから、容易に想像できると思います。
ここで、皮膚に蓄積されるカロテノイドの性質を利用した、面白い研究報告を簡単にご紹介しましょう。
あるメーカーが独自に開発した機器を使い、日本人811名を対象に、皮膚に蓄積されているカロテノイド量と食事からの野菜や果物摂取量や血液中のカロテノイド量との関連を調べました。
その結果、皮膚のカロテノイド量が多い人ほど、野菜や果物摂取量や血液中のカロテノイド量が多い傾向がみられたのです。さらには生活習慣病関連の指標となる血液検査データ値にも問題がないことが示唆されました。
出典:野菜摂取量を非侵襲で推定する仕組み「ベジチェック®」の開発
こちらの研究報告からも、野菜や果物から「リコピン」をはじめとするカロテノイドを摂ることは、健康な体づくりに役立つことが期待できます。
リコピンの摂取目標量はどれくらい? トマト以外にリコピンたっぷりの食品はある?
日本人の食事摂取基準では示されていないものの、ある研究報告では「リコピン」の1日の摂取目標量は15mgとされているようです。
「トマトが苦手で…」という方も大丈夫です。「リコピン」が含まれているのはトマトだけではありません。他に、スイカ、ピンクグレープフルーツ、柿、金時人参などに多く含まれています。食品100g中のリコピン量を紹介しますので、摂取目標量と合わせて参考になさってくださいね。
●リコピンを多く含む飲食料品
品目
100gあたりのリコピンの含有量
品目100gの目安量
トマトジュース
19.0mg
-
ミニトマト
8.1mg
10個程度
スイカ
3.2mg
小玉すいか1/24カット程度
ピンクグレープフルーツ
3.2mg
1/2個程度
トマト
3.0mg
中2/3個程度
柿
0.7mg
1/2個程度
ちなみに、トマトのリコピン含有量は完熟度に比例します。青いトマトよりも真っ赤なトマト、生のトマトよりもトマトジュースなどの加工品のほうがより「リコピン」が多く含まれ、しかも吸収率も高くなります。
リコピンを効率的に摂取する方法
さらに「リコピン」を効率よく摂取したいという場合には、調理を工夫する方法があります。
「リコピン」は、熱に強く脂溶性です。
トマトであればオリーブオイルなどの油を使って焼く、炒めるといった加熱調理をすることで成分の吸収率を上げることができます。また、生でいただくときは、オイル入りドレッシングを利用するのがおすすめです。
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「リコピン」は体の中で生成することが出来ない栄養素です。そのため、「リコピン」が含まれる食品を意識的に取り、健康に留意して元気に過ごしましょう。
今日はさっそく、いつものお茶ではなくトマトジュースを飲むことから始めてみませんか?
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※記事の情報は2024年2月16日時点のものです。
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