朝食を抜くのはよくない? 管理栄養士がメリットやデメリット、理想の朝ごはんを教えます
忙しい朝はついつい食事が後回しになりがち。気付けば朝食はとらないのが当たり前になっている、なんて方も多いかもしれません。ですが朝食には、健康だけでなく、美容面でも大切な役割があるのです。管理栄養士の森由香子先生に、朝食の大切さや習慣づけるコツなどを伺いました。
データで見る朝食の欠食
みなさん、毎日、朝食をとられていますか?
40代以降の方は小さい頃から朝食をしっかり食べましょうと言われて育ってきた方が多いと思います。ですが、近年になり、朝食を抜くことをあえて推奨するような情報が多く聞かれるようになり、そのせいか朝食を食べない方が増えているようです。それを反映するかのようなデータがあるのでご紹介しましょう。
農林水産省「食育に関する意識調査」(令和元「2019」年10月実施)の報告によりますと、「ほとんど毎日食べる」と回答した若い世代(20~39歳)の割合は男性が58.0%、女性が69.2%で、他の世代に比べ低値という結果でした。
反対に、朝食を欠食する(「週に2~3日食べる」及び「ほとんど食べない」)若い世代の割合は25.8%(うち男性31.5%、女性21.0%)と他の世代に比べて高く、さらに「ほとんど食べない」と答えた若い世代の男性は21.0%、女性は11.8%にのぼりました。このように若い世代ほど朝食を食べない人が多く、男女を問わず朝食離れがすすんでいるように感じます。
朝食を食べない人に理由をたずねると、「ダイエットのため」、「早く起きられない」、「忙しいので食べる時間がない」、「食欲がない」などの声が聞かれます。
しかし、これらの理由で、このまま朝食を食べない生活を続けてもいいのでしょうか。
実は朝食の欠食が続くと、だんだん空腹を感じにくくなり、食欲不振に陥って欠食が習慣になると考えられています。
朝食を抜くメリットとデメリット
次に、朝食抜きのメリット、デメリットを考えてみたいと思います。
例えば暴飲暴食をした翌朝、朝食を抜くと、正常な機能を維持するうえで内臓を休めるという意味でメリットとして働くかもしれません。
また、朝食を抜けば単純に1日の摂取カロリーを減らすことができます。体重の増減は、摂取カロリーと消費カロリーのバランスですので、マイナスにすることができます。
ところが、実際はどうでしょう。そう上手くはいかない現状があると思いませんか。朝食を食べなくても、昼食までの間にお菓子をつまんだり、甘いドリンクを飲んだりしないでしょうか。
空腹状態は、血糖値を上げるためのホルモンの分泌が高まっている状態です。そこに甘いお菓子を食べると、血糖値が急上昇してしまいます。そしてインスリンの作用により血糖値の乱高下が起こり、かえって太りやすい身体をつくります。
ときどき、カロリーだけ考えて朝食は抜き、代わりにお菓子を食べるというような誤ったダイエットをしている人を目にしますが、前述の理由からおすすめできません。
朝食抜きのデメリットは、まだまだあります。
脳のエネルギー源となるブドウ糖が補給できないことや体熱産生が低調になることから、仕事や活動のパフォーマンスが下がりやすいと考えられています。また、私たちの身体に存在する体内時計が正常に働かなくなります。働かなくなると自律神経が乱れ、冷え性をはじめ身体の不調をきたす可能性が高まります。
さらには、朝食抜きは将来の健康にも悪影響を及ぼしかねません。若い頃から朝食を抜いていると、中高年世代になって悪い結果として浮かび上がってくることがあるのです。
例えばある研究調査*では、朝食抜きを長期間続けると脳卒中のリスクが高まることがわかっています。
*出典:朝食抜きで脳卒中リスク上昇、国立がん研究センターと大阪大学など調査 - 大学ジャーナルオンライン
また、筋肉量の減少、ひいては運動能力の低下や基礎代謝の低下を起こします。言うまでもありませんが、この結果やせにくい身体になってしまい、ダイエットの邪魔をします。
他にも、栄養不足を起こす懸念が挙げられます。
栄養不足は、肌や骨の健康維持を阻み見た目も老けやすくします。中高年の女性に多い骨粗鬆症は骨密度の低下によるものですが、骨密度の低下は、身体の中で一番先に頭蓋骨で起こると考えられています。頭蓋骨の骨密度が低下すると顔にハリがなくなり、皮膚がたるんでシワが出来やすくなり、老け顔をつくります。
いつまでもハリのある美しい肌を保つには、化粧品を使う表面からのお手入れも大切ですが、朝食を食べる習慣を身につけ、骨密度低下の予防に努める必要があります。
昼食や夜ごはんで栄養補ってはだめなの?と思われるかもしれませんが、身体に必要な栄養素は50種類ぐらいあると考えられています。これらを全て摂るには、1日2食で補い切れませんので朝食での栄養補給は大切です。
朝食習慣がない人は、まずは1杯の牛乳から! 理想の朝食メニューは?
しかし、いかに朝食が大切かということが頭でわかっていても、これまでずっと朝食を抜いていた人にとってはハードルが高く感じることもあるでしょう。そこでまずは、朝食を作る時間や食べる時間を確保するところからはじめましょう。平日が無理ならば休日だけでも試みてほしいと思います。
食事の内容は、簡単に食べられるものでかまいません。固形物が難しければ、牛乳を飲む、味噌汁を飲むなど、何かしら口にするところから始めます。凝った調理をする必要もありません。コンビニやスーパーで購入できるものを活用しましょう。
そして、朝食を取ることが日常になってきたら、シリアルと牛乳、おにぎりと味噌汁、ロールパンとヨーグルトドリンク、さらに慣れてきたら、ゆで卵、ハム、ソーセージ、サラダチキン、野菜サラダ、野菜スープなど品目を少しずつ増やしていきます。
最終目標は、主食、主菜、副菜を揃えることです。一例として挙げますと、ロールパン、サラダチキン、野菜サラダ、ドリンクヨーグルト、フルーツなどが食卓に並ぶといいですね。
ときどき栄養補助食品を食事代わりにしている方がいますが、こちらは食事にはなりません。あくまでも食事の補助的な役割をするものですので、朝食は、食品を組み合わせたスタイルが望ましい姿です。
朝食をしっかり食べて、老いない身体づくりを!
朝食は、いつまでも健康的な生活を送るうえで非常に大切なものです。将来の身体への投資、健康資産を蓄えるツールと考えてほしいと思います。
とくに20歳代及び30歳代の若い方達は、「人生100年時代」を意識して、朝食をしっかりとる健全な食生活を習慣化するように努めてほしいと思います。若い頃からの正しい食生活が、いつまでも老いを知らない身体づくりにつながります。
充実した朝食を目指していきましょう。
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※記事の情報は2023年11月3日時点のものです。
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