大人が読みたい絵本10冊

慌ただしい毎日に少し疲れたら、絵本を開いてみませんか? ページの中に流れる穏やかな時間があなたを優しく迎えてくれますよ。

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本屋さんで何気なく手に取った絵本に思わず引き込まれたり、短いストーリーに込められたメッセージの奥深さにハッとさせられたりした経験、ありませんか? 絵本は子供のためだけのものにあらず。なかには様々な経験を重ねてきた今だからこそ共感できる物語や、忘れていた大切なことを思い出させてくれる一冊があります。

そこで今回は、大人になった今こそ読むべき10冊の絵本をご紹介。これまでに約3000冊の絵本を読んできたプロにセレクトをお願いしました。

  

この方に選んでいただきました!

ドンハマ★さん

ドンハマ★さん
「おとなの絵本プロジェクト」主宰。2014年から大人を対象とした絵本のよみきかせイベントを行い、これまでに240回、のべ4200人以上が参加。絵本を読んだ大人が元気でニコニコすれば、きっと子供にもよい影響を与えるという信条のもとこの活動を続けているそう。キラキラの大きな蝶ネクタイがトレードマーク。

「おとなの絵本プロジェクト」の詳細についてはこちらをチェック!
https://peraichi.com/landing_pages/view/otonaehon

  

ドンハマ★さんがセレクトした10冊

ドンハマ★さんがセレクトした10冊

  • 『みつけてん』作:ジョン・クラッセン/訳:長谷川義史/出版社:クレヨンハウス
  • 『きょうはマラカスのひ』作:樋勝 朋巳/出版社:福音館書店
  • 『やすんでいいよ』作:おくはらゆめ/出版社:白泉社
  • 『きょうのごはん』作:加藤休ミ/出版社:偕成社
  • 『わたしのものよ』作:マル―/出版社:WAVE出版
  • 『ネコヅメのよる』作:町田尚子/出版社:WAVE出版
  • 『月夜とめがね』作:小川未明/絵:高橋和枝/出版社:あすなろ書房
  • 『すきになったら』作:ヒグチユウコ/出版社:ブロンズ新社
  • 『あさになったのでまどをあけますよ』 作:荒井良二/出版社:偕成社
  • 『おなじそらのしたで』作:ブリッタ・テッケントラップ/訳:木坂涼/出版社:ひさかたチャイルド

  

大阪弁と、カメのあいだに流れる独特の空気がクセになる

『みつけてん』

『みつけてん』
作:ジョン・クラッセン 訳:長谷川義史
出版社:クレヨンハウス

ジョン・クラッセンの人気絵本「ぼうしシリーズ」の3冊目。日本を代表する絵本作家・長谷川義史さんが大阪弁で訳をつけています。ふたりのカメがすてきな帽子を見つけたけれど、帽子の数は1つ。さて、ふたりはどうする? というお話。 

ドンハマ★ポイント
同シリーズの『どこいったん』『ちがうねん』に続き、今回もふたりのカメのあいだに、1つの帽子をめぐるシュールな空気が流れています。だけど最後にちょっと「ほっとする」オチになっているところがこれまでの2冊にない新しい魅力。心温まる1冊ですよ。

 

マラカスに合わせて踊るクネクネさんのゆるさがたまらない!

『きょうはマラカスのひ』

『きょうはマラカスのひ』
作:樋勝 朋巳
出版社:福音館書店

クネクネさんは、マラカスが大好き! 今度のマラカス発表会では、難易度の高い技にも挑戦します。「チャッ ウー」「チャチャ ウー」の軽快なリズムとともに、ゆるーく展開していくお話にほっこりします。表紙裏に描かれているクネクネさんのタイツコレクションの数々にもご注目を。 

ドンハマ★ポイント
「クネクネさん」というキャラクターの名前からして笑っちゃうでしょ。全体的にすごくゆるいんですよ。このゆるさに根強い人気があるようで、「クネクネさん」はシリーズ化もされています。脱力系なので、ちょっと疲れたなとか元気でないなというときに読むのも良いかもしれませんね。

 

頑張り過ぎている人にそっと手渡したい、どこまでも優しい絵本

『やすんでいいよ』

『やすんでいいよ』
作:おくはらゆめ
出版社:白泉社

「やすんでいいよ」と言いながら、自分の体を差し出すきつねさんに、とんぼやちょうちょ、リスがやってきて一休み…という内容。小さめサイズなので、ちょっとしたプレゼントとしてもおすすめ。仕事や育児を頑張り過ぎているあの人に、そっとこの絵本を差し出してみては?

ドンハマ★ポイント
「やすんでいいよ」は、まさに育児中のお母さんが一番かけてほしい言葉ではないでしょうか。作家のおくはらさんはもともとユーモラスで独特の世界観がある物語を作っていたのですが、ご自身が妊娠・出産されてから作風がガラリと変わりました。この本にもご本人の体験や気持ちが込められているのがよく分かります。

美味しい匂いまでも漂ってきそうなリアルな絵に思わずゴクリ!

『きょうのごはん』

『きょうのごはん』
作:加藤休ミ
出版社:偕成社

さんまの塩焼きにカレーライス、コロッケ、オムライス…。どこの食卓にものぼるような日常の「ごはん」を、クレヨンとクレパスで迫力いっぱいに描いた絵本。色々な家の食卓の風景がネコの視点で切り取られている点もユニーク。

ドンハマ★ポイント
加藤休ミさんは、食べ物を描かせたらこの人ほどリアルに表現できる人はいないと言われているくらい、美味しそうに描く作家さんです。表紙にもなっている、こんがり焼けたさんまの塩焼きの絵を見ると毎回生唾ゴクリ。お腹空いている時に読むとツライ絵本です(笑)。

 

我が道をゆく猫の魅力が、生き生きとカラフルに表現された一冊

『わたしのものよ』

『わたしのものよ』
作:マル―
出版社:WAVE出版

「サカナ」と名付けられた猫が絵の仕事をしているリリさんと、犬のゴマと一緒に暮らす様子を、カラフルな色彩で描いた絵本。猫と暮らした経験のある人なら誰もが「あるある!」と笑顔になりそうな、自由奔放に生きる愛くるしい猫の姿に目が離せません。

ドンハマ★ポイント
自由に我が道を生きる猫は絵本の題材にされやすい動物ですが、この絵本もそんな猫の魅力がたっぷり詰まっています。猫からみたら、飼い主も含めた身のまわりにあるお気に入りのものすべてが「わたしのもの」なんですね。外国の絵本のようなカラフルなビジュアルも目を引きます。

 

猫のミステリアスな世界をのぞき見しているような感覚

『ネコヅメのよる』

『ネコヅメのよる』
作:町田尚子
出版社:WAVE出版

愛猫家としても知られる画家・町田尚子さんが、自身の飼い猫を主人公にして描いた絵本。ある夜、猫たちはそうっと家を抜け出して野原に集合します。猫たちがそこで待っているものとは…? 猫の秘密をこっそりのぞくようなミステリアスな雰囲気が漂う作品です。

ドンハマ★ポイント
作家の町田尚子さんはリアルで、ちょっとこわい絵を描く方で、京極夏彦さんの「怪談えほん」シリーズでも絵を担当したことのある方です。この『ネコヅメのよる』も、少し人を不安にさせるようなリアリティがあります。この絵本を読んだら、思わず夜空を見上げてネコヅメを探したくなりますよ。

 

「日本のアンデルセン」が贈る、美しく幻想的な大人のファンタジー

『月夜とめがね』

『月夜とめがね』
作:小川未明 絵:高橋和枝
出版社:あすなろ書房

日本を代表する童話作家・小川未明の詩情にあふれた作品。月のきれいな春の夜、静かに針仕事をするおばあさんの描写から物語ははじまります。絵本でありながら短編小説のような読み応えもあり、小川未明の世界が存分に味わえます。

    ドンハマ★ポイント
明治から昭和にかけて活躍した小川未明さんは「日本のアンデルセン」と呼ばれている方で、不思議な話や悲しい話をたくさん書いています。この『月夜とめがね』も、おばあさんとちょうちょが出てくる幻想的な物語。高橋和枝さんの美しい絵と一緒にゆっくり味わってほしい、大人のためのファンタジーです。

「好きになること」が分からなくなった、迷える大人にオススメ

『すきになったら』

『すきになったら』
作:ヒグチユウコ
出版社:ブロンズ新社

緻密に描かれたはかなげな少女とグロテスクなワニ。不安定なふたりの関係のなかに、誰かを好きになったときの心のゆらぎが淡々と描かれています。「すきになったらしりたくなる。あなたのすきなものをすきになったり、あなたにとってだいじなものをりかいしたくなる」。恋をすると誰もが抱く感情を綴っていながら、読みすすめるほどにどうしようもなく胸が切なくなる一冊です。

ドンハマ★ポイント
ヒグチユウコさんの作品は、独特の《きもかわ》なキャラクターに思わず引き込まれます。その中では、この『すきになったら』はかなりストレートな表現かなとも思いますが、誰かを好きになることの本質が描かれているように思います。人を好きになるってどういうことか分からなくなった大人の方に、ぜひ読んでいただきたい絵本です。

 

窓の外に広がる日常が、このうえなく愛おしくなる

『あさになったのでまどをあけますよ』

『あさになったのでまどをあけますよ』
作:荒井良二
出版社:偕成社

「あさになったのでまどをあけますよ」という言葉とともに、誰かにとってのなじみの風景がページをめくるごとに色彩豊かに広がっていきます。何気ない日々のくりかえしの中にこそ美しさがあり、生きる希望に満ちているということを感じさせてくれる一冊。

ドンハマ★ポイント
2011年の東日本大震災後に、作家の荒井良二さんが東北沿岸部の被災地を巡ったそうなのですが、この絵本はその後に出版されたものです。ここに描かれている川の流れる町やにぎやかな都市、雨降る海辺などは誰かが暮らす日常の風景なのですが、どこか心象風景のようにも受け取れる。ふるさとを離れなければならなかった方への、作家の思いも込められているように感じます。

 

読んだ後に心が前を向く、静かだけれどチカラのある一冊

『おなじそらのしたで』

『おなじそらのしたで』
作:ブリッタ・テッケントラップ 訳:木坂涼
出版社:ひさかたチャイルド

歌いながら海を泳ぐイルカの群れ、草原でたわむれるライオンの親子、都会で暮らす猫の家族…。このはるかな世界で、今日も繰り広げられる様々な命の営み。けれどみんな同じ空の下でつながっているというメッセージが、静かに心に響く一冊です。

ドンハマ★ポイント
ドンハマ★ポイント この絵本は、僕がやっている「おとなの絵本プロジェクト」でも、イベントの最後に読ませてもらうことが多いです。「遠く離れていても心はつながっているんだよ」ということを教えてくれて、心が未来に向く感じがいいなと思って。それに型抜きのしかけもあるので、何度も手に取って読み返したくなるんですよね。

 

いかがでしたか? 絵本はパラパラと絵を眺めるだけで楽しめる気軽さがあります。また文章が短いので、誰かに読んであげることもできます。一人で静かに絵本の世界に浸るのもよし、「おとなの絵本プロジェクト」のようなイベントに参加してみんなでワイワイ読み合うのもよし。お気に入りの1冊を見つけたら、誰かにプレゼントしてみるのもおすすめですよ。





※記事の情報は2018年11月20日時点のものです。

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